人民欺瞞の金正恩演説 朝鮮労働党創建75周年閲兵式 その1
Japan In-depth / 2020年10月13日 18時42分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・プロパガンダ性の強い、深夜の朝鮮労働党創建75周年閲兵式。
・金正恩氏の演説は政権延命のための言葉で終始。
・式典の一方で台風9号で崩壊した瑞川地区では必死の復旧作業。
人民欺瞞の金正恩演説
10月10日、金正恩委員長は、党と軍の幹部を含む2万余名の人々を集め、真夜中に朝鮮労働党創建75周年閲兵式を行った。動員された軍人も万単位だと推測される。その中には、金正恩に花束を渡すために、眠さをこらえ長時間待機させられた子どもたちもいた。
この映像は編集され、19時間後の同日午後7時に朝鮮中央テレビで放映された。実況放送ではなかった分、プロパガンダ性が強いと見なければならない。韓国や日本のメディアは、真夜中に行われた閲兵式に対して、これまでにはない異例なものだと驚きを示し、これは誰の演出なのか?映像技術が進歩している、などと解説していたが、真夜中に行われたこのプロパガンダの非人道的本質を厳しく指摘するメディアはほとんどなかった。
この編集された閲兵式映像からは、ヒトラーが光の効果を意識してサーチライトを利用した1937年のナチ党大会を想起させるものがある。
「ありがとう」「申し訳ない」で一貫した金正恩演説
金正恩委員長は、閲兵式を前にして30分の演説を行ったが、その内容は、人民への欺瞞と核武力でなんとか自らの政権を延命させようとする必死の思いで一貫していた。
金正恩は演説で、「真に人民に打ち明けたい心のうち、真情は「ありがとうございます!」の一言につきます」としたが、この言葉を皮切りに「ありがとう」という表現が12回、「感謝」という表現が6回、「苦労」「すまない」という表現も少なくとも5回使われた。
7700字に達する演説のうち、最初のあいさつ370字や軍事力アピール1200字などを除くと、「ありがとう」「申し訳ない」との表現に大部分の約5000字が割かれている。
そして「防疫戦線と自然災害復旧戦線で人民軍将兵が発揮した愛国的献身は、感謝の涙なしに接することができない」と言ったくだりでは涙ぐむシーンまで見せていた。それがお涙頂戴の演出だったかどうかはわからない。また三重苦を経た人民に対して「面目がない」と自分を責める場面もあった。こうした演出を行わざるを得なかった背景には、人民の金正恩に対する不満の高まりがあると見られる。
しかし、人々の生活を飢餓状態から救い出す対策には一言も触れなかった。すべての責任を経済制裁と新型コロナウィルス及び豪雨と水害のせいにして、人民に耐えることだけを求めた。
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