タイ脱走ウイグル族捜索の背景
Japan In-depth / 2020年10月19日 23時0分
■ 脱北者ルートと重なる経路
ラオスを経由して中国からタイ北部へ不法入国するルートはかつて北朝鮮から脱出して中国、ラオスからタイに入り、第3国への亡命を求める北朝鮮人の「亡命脱出ルート」として知られていた。
現在は中国国内での警戒が厳しくなり、このルートでラオス経由タイへ脱出する北朝鮮人は激減したといわれているものの、今回のケースで同じようなルートを中国政府による弾圧、人権侵害の深刻化が伝えられるウイグル族が利用している可能性が浮上している。
中国からラオス国境、ラオスからタイ国境を越える際には不法越境、脱出を手引きする組織があるとされ、こうした組織がウイグル人の中国脱出、ラオス経由でのタイ入国にも関与している可能性が高いとみられている。
今回脱走しているウイグル族2人は約50人のタイに入国したウイグル族の仲間とされ、50人はラオスとの国境を超えた際にタイ当局に拘束されて現在タイ国内の4か所の入管施設に分散拘留されているという。
■ 中国への強制送還で国際的批判浴びる
タイへは2014年以来約350人のウイグル族が中国北西部の新疆ウイグル自治区から逃れてラオスなどを経由して入国、拘束された。
タイ政府は中国の求めに応じる形で2015年7月この350人のウイグル人のうち109人を中国に強制送還したことがある。
タイの首都バンコク中心部の観光地でもあり、タイ人の信仰場所でもある「エラワン祠」などで同年8月に連続爆弾テロが発生し、観光客など20人が死亡し、容疑者としてウイグル族の2人が逮捕された。このテロはタイ政府による強制送還措置に対するウイグル族の「報復」とみられていた。
▲写真 エラワン神社バンコク2018で祈る人々 出典:Wikimedia Commons; Chainwit.
その後国際的な人権団体やウイグル族支援組織などから「中国に強制送還されたウイグル族には強制収容所送りや過酷な処罰が待っており人権上問題である」との厳しい批判をタイ政府は浴びる結果となったが、「報復の爆弾テロ」があったことからタイ政府はじめタイ国内でのウイグル人への同情論は盛り上がらなかった経緯がある。
中国からの経済援助などで基本的に親中の立場をとる現在のプラユット政権は、不法入国して拘束したウイグル人の中国強制送還の方針を依然として堅持しているといわれ、現在拘束されているウイグル人の間では「強制送還の危険」が共有され、それが今回2人のウイグル人が脱走を繰り返す背景にあるのは間違いないと人権団体などは指摘している。
トップ写真:ウイグル人弾圧への抗議 出典:Flickr; langkawi
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