フィリピン、迫るテロの危機
Japan In-depth / 2020年11月16日 18時54分
■「アブ・サヤフ」メンバーも殺害、逮捕
また地元メディアによると同じ13日午前5時半ごろにはミンダナオ島西部あるバシラン島でフィリピンのテロ組織「アブ・サヤフ」のメンバー、ハシド・サリジム容疑者の潜伏先が軍の急襲を受けて同容疑者が銃撃で死亡する事件も起きた。
「アブ・サヤフ」はドゥテルテ政権下で最も過激なテロ組織として爆弾テロ、自爆テロを繰り返しており、ドゥテルテ大統領が治安当局に対して「手段は問わないので掃討作戦で組織の壊滅を目指すように」と直接指示を出している「ナンバーワン標的」とされるテロ組織だ。
今年8月24日には南部スールー州のホロ島ホロ市中心部で連続自爆テロが発生し、15人が死亡、70人以上が負傷するテロ事件が起きた。その計画、自爆用爆弾の製造に深く関与したとされる「アブ・サヤフ」の幹部はドゥテルテ大統領から最重要指名手配容疑者とされているものの、依然として逃走中で行方はつかめていないといわれている。
同組織にはインドネシア人テロリストも参加しており、インドネシアのテロ組織とのネットワークが存在することも確認され、インドネシア当局とも綿密な情報交換で組織壊滅作戦が続けられている。
11月3日には海上での追撃作戦で「アブ・サヤフ」のメンバー7人が殺害されており、12日にはスールー島南部のパティクルでアブ・サヤフの地域指導者の1人、アマ・ウラ容疑者が銃撃戦で負傷の末逮捕されている。
ウラ容疑者はインドネシア人漁民などの人質事件への関与が疑われ、指名手配中だった。銃撃戦で負傷したウラ容疑者はその場での射殺を希望したが、さらなる捜査のため治安当局が逮捕して現在軍の病院で監視を受けながら治療中という。
■ドゥテルテ大統領の難しい舵取り
このように最近も大きな成果を挙げているドゥテルテ大統領による対テロ強気の作戦は特にテロに日常生活を脅かされている南部ミンダナオ島やスールー諸島の国民からは高い評価を受けている。
その一方で折からのコロナ禍による経済低迷で生活難や不況に苦しむ地方の農民などはテロ組織による経済的支援と引き換えの組織メンバーへの勧誘や情報提供などの協力要請に正面切って「ノー」と言いづらい状況も生まれつつあるとの指摘もある。
このためトゥテルテ政権はテロ組織の掃討・壊滅作戦のさらなる徹底と同時に、疲弊する地方住民への手厚い支援も求められるという難しい局面に立たされていることも事実であり、今後の手腕が注目されている。
トップ写真:ダバオ国際空港ターミナルの前の爆破現場でろうそくを灯すドゥテルテ大統領 出典:Flickr; Keith Bacongco
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