仏の暴徒「ブラック・ブロック」
Japan In-depth / 2020年11月30日 23時2分
ジェラルド・ダルマナン内務大臣によれば、グローバルセキュリティー法案が成立しても、「警官を撮影する権利は常にあり、法律に違反する問題があればその動画を検察官に送る権利もある。だが、インターネットで流すようなときには、警官の顔をぼかす必要がある。」ということであり、なんら権利を阻害するものではないとしている。
だがジャーナリスト組合や人権団体などは、この法案が成立すれば、「表現の自由を制限される」と主張しており、それらの団体の呼びかけにより、フランス各地でデモが開催されたのだ。内務省によればパリではおよそ4万6000人が参加したという。デモでは、「メディアがもう二度と動画を使用して問題を訴えることができなくなる」、「撮影ができなくなる」、「警察の暴力の表面化を制限される」と訴えたり、「警察の暴力を止める」ためにも法案に反対する人々の姿が見られた。
ダルマナン内務大臣の説明から考えても、「撮影ができなくなる」などは誤解が元になっていると思われるが、確かにこの法案が通ればインターネットで流す場合は警官の顔をぼかさなければいけないことで、気軽に加工無しの映像をアップできなくなるのは事実であろう。映像を拡散するのはメディアだけではなく一般市民にも多く存在しており、違反すれば罰金が科せられるとなれば、映像公開のハードルが上がる。これによって不用意に警官のプライバシーがさらされる危険性は減少するが、利用者にとっては気軽に映像を投稿しにくくなると予想でき、そういう理由も含め法案に反対している人もいる。
「ブラック・ブロック」という暴徒
しかし、いずれにせよ正当な理由でデモ行進が行われる分には問題がないが、それよりも、デモを開催することにより、破壊行為を目的とする暴徒が集まってくることが今回も問題となった。それが「ブラック・ブロック」と呼ばれる黒づくめの服を着用し覆面をした集団だ。
▲写真 2009年にワシントンDCの世界銀行近くでデモを行うブラックブロックグループ。 出典:Wikimedia Commons; Ben Schumin
ブラック・ブロックの中には、混乱を誘導するために戦闘的無政府主義者(アナキスト)や反資本主義運動家もいる可能性は高いが、大多数はデモなどに便乗して商品強奪のためにやってきたり、もしくは破壊を楽しむ小さいグループの集まりである。
今回のデモにも、この100人前後のブラック・ブロックが現れた。結果、出発点のレピュブリック広場での穏やかなデモ行進とは対照的に、到着地点であるバスティーユ付近では、フランス銀行や複数の車などへの放火、商業施設やキャッシュディスペンサーの破壊、そして警察の治安部隊との激しい衝突が起こったのだ。
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