比テロ組織幹部大量投降の裏
Japan In-depth / 2020年12月12日 11時0分
指導者のサワディン容疑者は2019年1月にホロ島で起きたインドネシア人夫妻による連続自爆テロ(死者23人)を画策、協力した張本人とされ、2020年初めに政府軍との戦闘で死亡したと言われているが、治安当局は同容疑者の死亡をこれまで確認していない。
▲写真 フィリピン軍 出典:Kguirnela
■身代金拒否の外国人は殺害
治安当局によると投降したハナイン容疑者はこれまで2012年のオランダ人バードウォッチャー、2015年のイタリア人、同年のカナダ人2人、ノルウェー人、フィリピン人女性というそれぞれの誘拐に関与した疑いがもたれている。
このうちイタリア人とノルウェー人はイタリア政府、ノルウェー政府が身代金の支払い要求に同意したため2016年にそれぞれ解放されている。
しかしカナダ政府が身代金支払いを拒否したためカナダ人2人の人質は殺害され、オランダ人の人質は軍による救出作戦の最中に「アブ・サヤフ」によって殺害され、フィリピン人女性は2020年初めに解放されている。
■指導者巡る問題と軍の強硬姿勢が奏功か
今回の「アブ・サヤフ」の幹部を含む多数のメンバー投降の背景について軍などの治安当局は①地元政府や軍による法律に基づくメンバーの平和的社会復帰を促す作戦が効果を表したこと②今後も治安を攪乱するようなことがあれば軍による厳しい作戦、対処が待っているとの宣伝効果があったこと③実質的な指導者やサブリーダー、地域の指導者が相次いで殺害されたことにより後継指導者選出が難しくなり、組織としての活動が困難になったこと、などと分析している。
「アブ・サヤフ」はこれまで軍による掃討作戦などでメンバーが大幅に減少しており、最近の分析では総勢力が200人前後にまで減っているとみられている。このため今回の39人の「大量投降」は組織にとってかなりの痛手との見方が有力だ。
しかしフィリピン治安当局や情報当局などではそうした実態を反映して「アブ・サヤフ」が新たなメンバー獲得や資金獲得のために新たな誘拐作戦を実行する可能性がある、として警戒を強めている。
テロとの戦いを積極的に進めているドゥテルテ大統領にとっては「アブ・サヤフ」の組織弱体化につながる今回の投降を歓迎しているものの、一方で深刻化するコロナウイルスの感染拡大防止対策と同時にコロナ・ワクチンの大量確保に日々追われているのが実情で、
枕を高くして眠れる日はまだまだ遠いといえるだろう。
トップ写真:ドゥテルテ大統領 出典:Addustour, Jordan Press & Publication Co./KHALIL MAZRAAWI
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