〝焼き音すれどステーキ出ず〟のバイデン 【2021年を占う!】米国
Japan In-depth / 2020年12月21日 21時38分
バイデンは、中共との新冷戦においても、レーガン的要素を濃厚に持ったトランプ路線を捨て、ただ漫然と時計の針を巻き戻すだけの男となりかねない。
アメリカの大統領がトランプからバイデンに代っても、米国の厳しい対中姿勢は変わらないという声をよく聞く。果たしてそうか。
確かに中共の人権蹂躙や知的財産窃取を批判する発言のレベルでは大差ないかもしれない。しかし問題は行動である。バイデンは、とりわけ発言と行動のギャップが大きいことで知られる政治家である。
バイデン自身、2007年に出した回顧録で、自分は次のような批判を受けてきたと率直に記している。
①しゃべり過ぎる
②論理でなく感情に動かされる
③汗をかいて結果を出す姿勢に乏しい
「ジュージューと焼き音はするがステーキが出てこない」。あるベテラン記者はそう端的に総括した。
すなわち、立派な演説はするが、結果につなげる政策構想力と決断力に乏しい。
決断力の欠如については、国際テロ組織アルカイダの首領オサマ・ビンラディン除去作戦(2011年5月2日)の際の逡巡が典型例である。
バイデンは上院議員に次いで副大統領として、「ビンラディンはどこまでも追いかけ、必ず正義の鉄槌を下す」との趣旨を度々語っていた。
ところがいざビンラディンの隠れ家が特定され、海軍特殊部隊による襲撃作戦実行という段になって腰が引けた。
「失敗すると大きな非難を浴び、政局になる。さらに情報収集を続けた方がよい」と最後まで慎重論を唱えたのである。失敗とは、特殊部隊や女性、子供に死者を出しながらビンラディンは取り逃がす、といった場合を指す。繰り返し大見得を切りながら、結局は「失敗」を懸念して先送りを図るあたりがバイデンらしい。「焼き音はするがステーキが出てこない」と揶揄される所以である。
▲写真 オサマ・ビンラディン襲撃作戦に見入るオバマ政権の国家安全保障担当幹部ら(2011年5月3日 ホワイトハウス)。左からバイデン副大統領、オバマ大統領(いずれも当時)、右端がロバート・ゲイツ国防長官(当時)。 出典:flickr; US Embassy (Public domain)
オバマ政権で同僚だったロバート・ゲイツ元国防長官は回顧録に、「ジョーは過去40年間、ほとんどあらゆる主要な外交安保政策について判断を誤ってきた」と記している。たまたまバイデンと意見が一致すると、自分は間違っているのではないかと懐疑の念に襲われた、とまで書いている。
オバマ政権における「テロとの戦争」の最大の成果は、バイデンの反対をオバマが容れなかったがゆえに得られたものであった。
日本政府は決して、バイデンの断固たる発言の後に、それに即した行動が続くと考えてはならない。本人および周辺に対し、最後の最後まで念を押し、釘を刺し続けねばならない。土壇場ではしごを外された場合に備え、収拾策も常に用意しておく必要がある。
トップ写真:ジョー・バイデン次期大統領(2019年11月30日) 出典:flickr; Matt Johnson
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