東南アジア外交重視を【2021年を占う!】日本外交
Japan In-depth / 2020年12月27日 11時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・バイデン氏は多国間主義への復帰を目指そうとするが抵抗も大きいだろう。
・米中の亀裂も大きい。日本に米中関係を修復させる力と意思はあるか。
・政府は、日本の基盤である東南アジア外交にもっと力を入れるべきでは。
「アメリカ第一」を唱えたトランプ政権時代は、過去のアメリカが世界をリードしてきた国際条約や国際機関から次々と脱退し、世界の同盟国を困惑させてきた。
特に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」や世界保健機関(WHO)からの一方的離脱、イランとの国際的核合意からの脱退、さらに自由貿易を推進するための環太平洋経済連携協定(TPP)などからも脱退するとして、経済のグローバル化や自由貿易、多国間主義にも背を向け、NATO加盟国や日本に防衛費の負担増を迫ってきた。
バイデン新大統領はこうしたトランプのアメリカ第一主義を改め、日本や欧州諸国とのかつてのルールに基づく多国間主義への復帰を目指そうとするだろう。その点では、アメリカと他の自由主義国との関係は落ち着いたものになるかもしれない。
しかし、トランプが敗北したとはいえ、バイデンと僅差の7000万票台の得票を獲得しており、アメリカの分断の深さも見せつけている。米国東部と西海岸にはバイデン支持者が多いものの、アメリカ中西部にはトランプ支持の固い基盤があるようで、簡単に昔のアメリカに戻れるとは思えない。
▲写真 ジョー・バイデン次期大統領(2020年12月17日) 出典:Joe Biden facebook
バイデンが国際協調主義を進めるとしてもアメリカ国内には相当の抵抗があるのではないだろうか。もはや昔の“良きアメリカ時代”に戻るには、相当の時間がかかるし、アメリカ国民自身がアメリカ社会分断の傷跡が思っている以上に深かったことを思い知らされそうだ。
しかも国際社会では、米中の亀裂も大きく、対立点も少なくない。日本は今後もアメリカに肩を寄せた外交をとれるのか。欧州も中国との貿易を考えるとアメリカ一辺倒というわけにはいくまい。
日本は米中の対立に割って入り、修復させる力と意思があるのかどうか。さらに日本は安倍政権時代に“トランプのアメリカ”に力を入れすぎ、トランプのアメリカとの絆は深めたが、日本の基盤である東南アジアを放置した感じがする。東南アジア外交にもっと力を入れるべきだったのではないか。
トップ写真:菅義偉首相(2020年12月16日) 出典:首相官邸 Twitter
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