中国「公船」という呼称止めよ
Japan In-depth / 2021年1月6日 23時0分
日本からすれば自国の領海に傍若無人に侵入してくる外国の船をあえてその外国の立場に立って「公船」と呼んでいることになる。おかしな話である。自分の家に侵入してくる強盗を「公務の役人」と呼ぶことに等しいのだ。
そもそも「公船」という名は軍事能力や殺傷性のない非武装の船を思わせる。だがとんでもない。日本の領海に侵入してくる中国船は事実上の軍隊の艦艇なのだ。その所属する組織は中国海警局である。この中国海警局はよく日本の海上保安庁にたとえられるが、それも事実誤認である。
中国海警局は中国人民武装警察の一部である。この人民武装警察は中国の正規の軍隊である人民解放軍の一翼を担う。海警局は武装警察部隊の他の部隊と同様に中国共産党中央と中央軍事委員会の指揮下にあるのだ。
▲図 海警の指揮系統 出典:海上自衛隊幹部学校ホームページ
さらに日本領海に侵入してくる海警局の船はみな武装している。しかも独自に軍事力を行使する権利を中国当局から与えられている。日本侵入の艦艇は通常、4隻の艦隊を組んで航行するが、みな数千トン、ときには1万トンを超える軍艦と呼べるフリゲート艦や巡洋艦、駆逐艦である。
最近まで人民解放軍の海軍の艦艇だった船がそのまま海警局に回され、日本領海へと侵入してくる場合も多いのだ。「公船」といういかにも非武装に思える名称がいかに誤解を与えるか、である。
この問題は日本の国会議員では珍しく自民党参議院議員の有村治子氏が提起していた。有村議員は国会で尖閣諸島という名称には必ず沖縄県とか石垣市という日本の行政組織の名をつけて言及すべきだと提言した実績もある。
▲写真 有村治子参院議員 出典:参議院ホームページ
その有村議員がつい最近、日本戦略研究フォーラムでの講演で「日本の領海や接続水域に侵入してくる中国の艦艇を『公船』と呼ぶべきではない」と、きわめて説得力のある意見を述べているのを私自身も拝聴した。この意見が自民党や政府の全体へとぜひ広がってほしいものである。
トップ写真:尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国海警局の艦艇(奥)海上保安庁提供 出典:令和2年版 防衛白書
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