バイデン政権、中国融和の兆し
Japan In-depth / 2021年2月28日 12時21分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン政権が「中国ウイルス」「武漢ウイルス」の呼称禁止。
・米大学が「孔子学院」との接触を報告する義務づけも撤回。
・バイデン大統領の実際の行動はすでに習近平政権への融和路線。
アメリカのバイデン政権が中国への融和を示すような動きをあいついでとった。
アメリカ新政権の中国への姿勢や態度は日本でもきわめて関心度が高い。その新政権は登場から5週間ほど、新任の高官たちは議会の公聴会などでみな中国をアメリカの競合相手と呼び、中国側の軍事拡張や不公正な経済慣行、さらには人権弾圧への批判的な言辞を述べる。
その発言を集めると、バイデン政権も中国にはなかなか強硬な態度をとるかのようにもみえる。日本の識者たちももっぱらバイデン政権の対中政策は強硬になるとの見方が多いようだ。だがその判断の根拠となるのはみな言葉だけのようである。
ところがバイデン政権が実際の公式の行動として中国発の新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と呼ぶことを公式に禁止した事実は日本では意外と知られていないようだ。
それだけではない。
バイデン政権は同時にアメリカの各大学が中国共産党の対外宣伝教育機関の「孔子学院」との接触を米側公的機関に報告することを義務づけたトランプ前政権の行政命令をも撤回した。
両方とも中国への融和や忖度を思わせる措置である。単なる言葉ではなく、実際の行政措置という行動なのである。
「バイデン政権はトランプ前政権と同様の対中強硬策をとる」と断言する向きは直視すべき現実だろう。
この二つの措置はいずれもトランプ政権の政策の逆転だった。しかもその逆転に対してアメリカ国内ではすでに激しい反対論も生まれてきたのである。
バイデン大統領は2021年1月26日、新型コロナウイルスのアメリカ国内での大感染の結果、アジア系米人への差別や憎悪が生まれているとして、その種の差別を取り締まる大統領令を出した。
その行政令に付随した覚書でバイデン大統領は「このウイルスの起源の地理的な場所への政治指導者の言及がこの種の外国人嫌悪を生んだのだ」と述べ、連邦政府としては「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」という呼称を使うことを禁ずることを宣言した。政府関連の文書でのその種の用語の禁止だった。
同覚書の「政治指導者」とは明らかにトランプ前大統領やその閣僚らを指していた。トランプ氏は2020年春から率先して「中国ウイルス」という呼称を使っていたからだ。
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