キューバ新体制にカストロ家の影
Japan In-depth / 2021年3月7日 11時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・4月にラウル・カストロ第1書記引退、ディアスカネル大統領が後継。
・ラウル氏の子息や元女婿が陰の実力者、新体制の基盤は不安定。
・ディアスカネル大統領の経済改革案、本来の改革・開放とは無関係。
■「当分はラウル氏院政」との見方も
キューバにとって2021年は歴史的転機となる年である。
4月に開催する第8回共産党大会で党のトップであるラウル・カストロ第1書記が退任する見通しだ。これにより、実兄の故フィデル・カストロ氏が率いた1959年のキューバ革命以来続いてきたカストロ兄弟の支配体制が終わり、ディアスカネル大統領を党第1書記とする新たな体制がスタートする。
▲写真 ディアスカネルキューバ大統領 2019年10月17日メキシコ公式訪問 出典:Hector Vivas/Getty Images
最大の関心はディアスカネル氏が果たしてどれだけ新リーダーとして独自の政策を打ち出すことができるかだ。「ディアスカネル氏の権力はまだ固まっておらず、リーダシップを発揮できるような状況ではない」(長年キューバ事情を研究するペルー・カトリカ大の政治学者)とみる中南米専門家は多い。
こうした専門家の意見に共通するのは、キューバ政治におけるカストロ一族の影響力を強調する見方である。ディアスカネル大統領は優秀なテクノクラートで、ラウル氏が自らの後継者として選んだ人物とされ、同大統領とマレロ首相による二人の指導体制への移行もスムースに行われるとの予想が一般的。だが、「当分の間はラウル氏の事実上の院政が続く可能性が大きい」(前述のペルー・カトリカ大政治学者)との説が取り沙汰されている。
■“陰の実力者ナンバーワン”は軍の企業統括組織トップか
ラウル氏の影響力が残るとみる根拠は、同氏の身内に政治発言力を増している実力者2人の存在である。一人はラウル氏の息子であるアレハンドロ・カストロ氏。アレハンドロ氏は今年56歳。61歳のディアスカネル大統領とはそれほど年も違わないが、強硬な反米主義者といわれる。
在京キューバ大使館関係者によれば、同氏は軍人出身で、内務省で情報部門の責任者の地位についていたが、ラウル氏が党と政府の権力を掌握するのに伴い、父親の個人的顧問として数々の重要な政治決定に関与するようになったという。
2015年4月、キューバ国家評議会議長だったラウル氏が当時のオバマ米大統領との間で1956年以来初の両国首脳会談を行った際にも、アレハンドロ氏が同行しており、そのころから政治の表舞台にも登場するようになったようだ。
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