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震災10年 放送されぬ「遺体」

Japan In-depth / 2021年3月14日 11時0分

▲写真 宮城県気仙沼で遺体を運ぶ救助隊員(2011年3月16日) 出典:Paula Bronstein/Getty Images





一体、いつからテレビは遺体を放送しなくなったのか?明確にいつから、というのは分からないが、「NHK放送ガイドライン2020」には以下の記述がある。





11 事件・事故 6映像の6項目

「事件や事故、災害などでは死者の尊厳や遺族の心情を傷つける遺体の映像は、原則として使用しない」

15 国際・海外取材 2戦争・テロ報道」の5項目

「戦場やテロ現場の映像については、慎重に判断して扱いを決める。遺体の映像は、人間の尊厳や遺族などの感情も尊重し極めて慎重に扱う。捕虜の映像は、人権に十分配慮し必要最小限にとどめる」





また、BPO(放送倫理・番組向上機構)中国・四国地区各局との意見交換会(2011年10月)で、震災報道について議論があった。





「東日本大震災報道」についての「日本のテレビでは遺体映像は出ていないが外国のメディアでは海に浮かぶ遺体の映像が流れたと聞く。どう考えるか」という質問に対し、以下のような意見が出された。





 ・牛や豚が死んでいる映像だけでは真実は伝わらない。次世代にまで伝えるという点では、迫真のある映像を残すことをベースに且つ人間の尊厳を守っていくという観点からまず撮影し、そのうえでボカシを入れるかどうかを議論し、出すべきものは出すという方向性で行かないとメディアとしての意義はない。





 ・欧米のメディアでは遺体を含むはるかに凄惨な画像が通常放送されている。それと日本での扱いとの間にあまりの段差がある。(中略)名前が特定できるとか親族には分ってしまう等の場合は別として、遺体であるから放送しないという一般的な原則が果たして有効かどうか、いま少し議論する必要があると考える。





 ・広島の原爆の時も遺体写真がほとんどなかった。(中略)やはり撮らなければいけない、記録しなければいけない。それを記憶させていかなければいけないというのが私たちの仕事の宿命というか使命だ。





こうした意見は放送業界の中に確かにあった。しかし、自粛は続いている。報道に携わるものとして、この問題は、絶えず自問自答していかねばならないものだろう。





事件、事故、そして大災害を風化させないために。





トップ写真:宮城県亘理郡山元町で、亡くなられた方に花を捧げる町長(2011年4月8日) 出典:Athit Perawongmetha/Getty Images




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