震災10年 自分を責めないで
Japan In-depth / 2021年3月14日 18時44分
お医者さんが言った。
「半年も頑張りました。人間で言ったら2年間は闘病したことになります」
その先生は、白い立派な花を贈ってくれた。
恐縮して固持すると先生は静かにこう言った。
「いいんです。僕は自分が看た子が逝ったときには必ずこうしているので」
その後、2020年に入るまで余り記憶がない。仕事は普通にやっていたと思うが、何をやっても手がつかなくなった。なんとも言えない寂寞感にとらわれ、この世を去った人やペットの顔を思い出すと自然と涙が出てくる。
そして自分を責めるのだ。
「もっと話をしておけばよかった」「もっとお見舞いにいけたのではないか」「もっと優しく出来なかったのか」など・・・後から後からそんな思いが溢れてくる。
自分はこんな弱い人間じゃないはずだ。そう思い、自らを鼓舞するが、また同じ思いに捕らわれる。
思い悩んであるとき友人に心療内科の先生を紹介してもらった。とても良い先生だよ、というので好奇心もあって、門を叩いた。
そこに紹介された美人の先生がいた。そう、女医さんだと聞いて行く気になったのだ。不純な動機だ。が、実際本当に私は参っていたのだと思う。
先生は話を聞いてこう言った。
「お話聞いて思ったけど、あなたはお薬いらないわね。処方しないわよ。もう治ってるんじゃないかしら。お母様は多分、この辺からあなたのこと見てると思うのよね」
彼女は自分の頭の上で片手をひらひらと振った。
「あなたが元気なかったら、お母さんも悲しむでしょう?」
ほんの10分くらいの会話だったような気がする。
先生の一言で随分救われた。もちろんその後すぐに元の自分に戻れたわけではない。多分2年くらいはかかったのではないか。元通りになったな、と思えるようになったのは。
▲写真 東日本大震災2周年、旧災害センターの残された遺構の前で。2013年3月11日宮城県南三陸町にて 出典:Athit Perawongmetha/Getty Images
家族を突然奪われ、取り残された人は、自責の念にからめとられてしまう。
大切なのは誰かに話すこと、誰かが話を聞いてあげることだ。それが専門の医者やカウンセラーでは無くても。
それで少しは楽になれる。前を向ける。
だから。
どうか、自分を責めないでください。あなたの大切な人は、たとえ今、あなたの目の前にいなくても、あなたのことを想っています。
あなたのことを愛しています。
トップ写真:宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)中学校で、東日本大震災の犠牲者追悼3周年記念式典で。 出典:Yuriko Nakao/Getty Images
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