資産形成派にとっての「資産活用」
Japan In-depth / 2021年5月15日 11時0分
現金・預金が大半の資産であるこれまでの高齢者にとって「資産活用」は、あまり議論の余地のないものでした。保有している資産を自分が生きると考える年数で割って求めれば、年間に引き出せる資金額のめどが立ちます。これを「定額引き出し」と呼びます。
その金額を公的年金に上乗せして生活に充当すればいいわけで、この場合の「資産活用」の要諦はできるだけ決めた金額しか引き出さないことになります。“引き出すためのノウハウ”はほとんど要りません。それよりも引き出したお金を使いすぎないことが重要になりますから、“使うためのノウハウ”が大切になります。これが今後の日本経済にも暗い影を落とします。この点については、いつかまとめてみたいと思います。
■資産形成派の「資産活用」=引き出しながら運用を続ける考え方
ところで、読者の皆さんの資産は現金・預金だけに偏っていないと思います。今やNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を使った資産形成は広がりを見せていますから、読者の皆様もすでにこうした非課税制度を活用されているのではないでしょうか。
有価証券で運用をして「資産形成」をしてきた人には、現金・預金時代の「定額引き出し」は通用しません。それどころか、「定額引き出し」が運用している資産を予想外に毀損させるといった、思わぬ事態を引き起こしかねません。
▲写真 イメージ 出典:Takashi Aoyama/Getty Images
それを回避するのが、残高に対する「率」を使った引き出し方法です。一定率で引き出す「定率引き出し」とか、年齢や余命を使って予め決めた比率で引き出す「予定率引き出し」といったノウハウが海外ではよく行われています。日本でもこうしたノウハウを活用しなければならない時代になってきたといえるでしょう。
■資産運用の出口戦略
ところで、この資産の引き出しという考え方は、見方を変えると「資産運用からの出口戦略」ともいえます。一般に現役時代から資産運用をしてきた人は、「いくら作り上げるべきか」はよく議論しますが、「作り上げた資産をどう引き出すか」、「資産運用をいつ辞めるか」といったことにはあまり意識を向けていません。実はこれが先ほど言及した「山を下ること」なのです。
“運用している資産を引き出すときに、リーマンショックが来たらどうしよう”、そんな心配を多くの方が持っているはずです。少しずつ運用をやめること、すなわち少しずつ引き出すことが、退職後の生活のなかでリーマンショックが再来しても痛手を最小限にする方法なのです。引き出すノウハウは「資産活用」において非常に重要な戦略といえます。
次回は「率」で引き出すことをもう少し踏み込んで解説していきます。
(続く)
トップ写真:イメージ 出典:Pixabay
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