フジモリ元大統領長女、逆転勝利へあと一歩 ペルー大統領選
Japan In-depth / 2021年5月18日 7時0分
▲写真 ペドロ・カスティジョ候補(2021年3月30日) 出典:Sebastian Castañeda - Pool/Getty Images
カスティジョ氏は前述のような社会主義的政策に加え、より強硬な共産主義国家の実現を目指すような発言を繰り返している。さらに、同氏と極左武装組織「センデロ・ルミノソ」(輝く道)とのつながりも取り沙汰されている。
センデロ・ルミノソは1980年代から90年代にかけペルー各地でテロ活動を展開、一般市民を含め多数の人々を殺害したことで悪名高い。この極左組織の政治団体にカスティジョ候補が関与しているとの報道が絶えず、リマの一部メディアは同候補について「極左指導者」と形容しているほど。同候補はまた、ベネズエラの反米左翼の独裁的政権を「民主的政権」と呼び、支持を表明、キューバ、ニカラグア、ボリビアの左翼政権に共鳴している。
▲写真 大統領官邸を囲む門の頂上に登ったフジモリ元大統領とケイコ氏 ペルー・リマ(2000年9月19日) 出典: Newsmakers/Getty Images
■「アンチ・フジモリ票」がカギ
ペルー・カトリカ大の政治学者は「カスティジョ候補の負のイメージが同氏支持の減少につながっており、保守や右派政党の支持者が“ましな方”としてケイコ候補を選択する傾向が表れている」と分析する。実際、第1回投票で第3位の得票を得た右派候補の政党は「ケイコ支持」を表明した。
一方、ケイコ氏にとって不安材料は反フジモリ感情が国民の間に根強く残っていること。父親のフジモリ氏が1990年から約10年間の大統領在任中、治安を回復し、市場経済の基礎を築いたのは確かだが、センデロ・ルミノソなどの撲滅を図るテロ対策で人権侵害事件を招いたほか、強権政治を断行するなど汚点を残したのも事実。これが反フジモリ感情を呼び起こし、ペルーのマスコミがしばしば指摘する「アンチ・フジモリ票」となって、過去2回の大統領選でのケイコ氏惜敗の最大要因になった。
今回の決選投票では「アンチ・フジモリ票をどれだけ減らすことができるかが、ケイコ氏の逆転勝利の大きなカギで、それまでにはあと一歩だ」(前述のペルー・カトリカ大政治学者)という見方は十分納得できる。
これに関しては、ノーベル文学賞受賞者で、以前ペルー大統領選にも出馬し反フジモリの急先鋒だったマリオ・バルガス・リョサ氏が今度の決選投票に関しては「ケイコ支持」を表明したことが注目される。
「アンチ・フジモリ」の壁を乗り越えれば、ケイコ氏がペルーはもとより、世界で初めての日系人女性大統領となり、かつ初の親子2代の日系大統領誕生が実現することになるだろう。
(了)
トップ写真:ペルーのリマで演説するケイコ大統領候補(2021年5月10日) 出典:Raul Sifuentes/Getty Images
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