1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

インドネシア・パプアで進む軍事作戦

Japan In-depth / 2021年5月18日 19時0分

■ スハルト時代の負の遺産





パプア地方は1998年に民主化のうねりと折からのアジア経済危機により崩壊したスハルト長期独裁政権時代にはスマトラ州北部のアチェ州、オーストラリアに近い東ティモール州と並んで独立武装闘争が激しく、「軍事作戦地域(DOM)」に指定され、増強された軍による武装勢力やその支持者への人権侵害が多く報告されていた地域だった。





その後インドネシアの民主化進展に伴い東ティモールは2002年5月に独立を果たし、アチェ州は2004年12月の「スマトラ島沖地震津波」の大被害を受けて和平交渉が進み、最終的にイスラム法が適用される特別な州としての地位を獲得して停戦が実現した。





その結果パプア地方だけがDOMの負の遺産として現在まで残されていた。





インドネシア人の間にはメラネシア系にキリスト教徒が多数であるパプア人への差別意識も根強く、治安当局による人権侵害も多く報告されているが、国際的な支援組織も少なく、独立運動はインドネシアの「喉に刺さったトゲ」として長らく放置されてきた経緯がある。





それが今回の現役陸軍准将の殺害という事件発生で新たな局面に入ったのだった。





■ 武装勢力幹部を殺害





陸軍部隊を中軸とする部隊がプンチャック県に増派(陸軍は定期的なローテンションであると増派を否定)されて始まった「軍事作戦」では、5月13日にプンチャック県ウロニ村でTPNPBのメンバー2人を殺害したほか、14日未明に同県イリガ地方でTPNPBの拠点を襲撃し、地方幹部とされるレスミン・ワケルら2人を殺害、武器を所持して逃走中の他のメンバーを捜索中だと軍は発表した。





現地ではインターネット回線が遮断されるなど情報統制が実施されており、軍事作戦の詳細は軍の発表以外には確認できない。そのため実際に何が起きているのかは不明の部分が多く、人権団体などからは「人権侵害」への懸念も高まっているという。





このように圧倒的な人員と武器を持つ軍による作戦は着々と進み、武装勢力を山間部に追い込んでいるといわれている。





ほとんど報道されることがなく、「忘れられた独立武装闘争」とも言われ続けてきたパプアの独立紛争は、インドネシア軍の総力を挙げれば完全に掃討、壊滅させることはそう難しいことではない。そのためこれまでは「パプア」のような紛争の現場をあえて残すことで兵士に実戦を経験させ、パプア社会に緊張感を持たせるために政府や治安当局は意図的に現状を維持してきたのではないか、との憶測も度々でていた。





しかし、今回軍幹部の殺害という「虎の尾」を踏んだことでパプアの独立運動はまさに風前の灯火、壊滅の危機に直面しているといえるだろう。





トップ写真:西パプアを独立国として認めるよう求めるパプア人のデモ参加者(2012年12月1日 インドネシア・ジョグジャカルタ) 出典:Ulet Ifansasti/Getty Images




この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください