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バイデン大統領、発言ミスの実例

Japan In-depth / 2021年5月18日 23時0分

 「ちょうどその時期にアムトラックではなじみのアンジェロ・ネグリという名前の車掌が車内で声をかけてきて、『ジョー、あなたは副大統領の専用機での飛行距離が130万マイル(約200万キロ)を越えたというニュースを聞いたけれど、アムトラックでの走行距離の方がずっと多いですよ』と列車の効用を説いてくれた」





バイデン大統領の以上のような発言はアメリカの主要メディアによっていっせいにその言葉どおりに報道された。ところがすぐにバイデン発言の内容が事実と異なることが指摘されてしまった。





まずバイデン大統領が話したエピソードは「副大統領になってから4、 5年目」というのだから2013年か2014年である。ところがバイデン氏の母のキャサリーンさんは2010年に亡くなっていた。副大統領になった翌年だった。





さらに彼が懐かしそうにその名前をあげた車掌のアンジェロ・ネグリ氏はバイデン氏と車内で話したという時期にはすでに死亡していた。しかもアムトラックの車掌の職から引退したのは1993年だったという。バイデン氏の回想よりは20年も前に車掌を辞めていたわけだ。





そのうえに2013年ごろに「バイデン副大統領の専用機での飛行距離が130万マイルを越えた」と発表されたという言葉も、事実とは異なっていた。ホワイトハウスの記録ではオバマ政権のバイデン副大統領がその専用機エアーフォース2での飛行距離合計で100万マイルを越えたのは2015年だとされていたのだ。





バイデン大統領のアムトラックに関する最近の発言はこのように明白な事実の違いだらけだったのだ。いずれもささいなミスとはいえるだろう。だがかりにもアメリカ合衆国の現職大統領の公式の場での発言なのである。そこから浮かんでくるのは、もはや認知症にも近い記憶がまだらな高齢の人物のイメージだといえる。バイデン大統領の統治能力にもかかわる深刻な現象でもあろう。





ホワイトハウスでは当然、バイデン大統領のこうした状態を知っていて、同大統領が報道陣や一般市民と接触する機会を厳重に制限している。とくに記者団からの質問に自由に自分自身の言葉で語るという機会を最小限にしている。この点、サキ大統領報道官も5月上旬に「バイデン大統領には記者との自由な質疑応答はなるべくしないように助言している」と、もらしたばかりだった。









▲写真 ホワイトハウスのサキ報道官 出典:Alex Wong/Getty Images





バイデン大統領が就任以来、公式記者会見は2ヵ月以上、議会演説は3ヵ月以上もしなかった異例の対応も、この発言能力の問題と深い関連があるといえよう。現に初の記者会見では質問を許す記者をすべて民主党支持メディアに限り、質疑応答でも想定の回答を多数のカードにして準備していた。これまた大統領側近のバイデン発言のミス症候群を恐れての配慮だといえよう。





***この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。





トップ画像:アムトラック50周年記念行事でスピーチするバイデン大統領(2021年5月1日 米ペンシルベニア州フィラデルフィア) 出典:The White House facebook




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