弱すぎる北京五輪「外交的ボイコット」
Japan In-depth / 2021年5月24日 19時0分
▲写真 ソチ冬季五輪のフリースタイルスキー男子ハーフパイプに出場するアメリカ人選手。開会式をボイコットした国の選手たちも競技には参加した。(2014年2月 ロシア・ソチ) 出典:sampics/Corbis via Getty Images
問題は2022年の北京冬季五輪に関して、中国政府による、ジェノサイドとまで表現される組織的なウイグル人弾圧、長年にわたるチベット弾圧、モンゴル系住民への抑圧強化、香港の自由剥奪ひいては中国全土における監視統制強化、外国人の不当拘束、南シナ海や東シナ海での侵略行動等々にも関わらず、ペロシ氏が主張する程度の措置でお茶を濁してよいのかだ。
ロシアの同性愛宣伝禁止とは明らかにレベルが違うだろう。
現に米共和党からは、ペロシ提案では生ぬるいとの声が即座に上がっている。下院人権委員会共同委員長のクリス・スミス議員(共和党。2006年4月に横田早紀江さんが下院外交委員会の公聴会で証言した際の共同議長でもあった)は、北京五輪反対は議会の総意との認識を示したうえで、スポンサーとして利益を得ようとしている「大企業」(big business)の責任を明らかにするため経営者を証人として議会に呼ぶと宣言した。
ペロシ氏の身内の民主党からも、中国の人権問題追及を主導するジム・マクガバン下院議員(議会行政府中国委員会委員長、下院人権委員会委員長)が、ペロシ氏が上記の発言をしたその場で、「虐待行為を行っていない国に会場変更する時間を国際オリンピック委員会 (IOC)に与えるため開催を1年延期すべきだ」と異論を述べている。
▲写真 ジム・マクガバン下院議員(民主党) 出典:Samuel Corum/Getty Images
北京五輪については、理想は完全ボイコットおよび先進7か国(G7)による代替大会開催だろう。アスリートは何ら傷つかない。日米欧カナダからなるG7諸国には、国際大会に耐えるハイレベルなスキー場やスケートリンクがいくつもある。代替大会の準備にさほど時間を要しないだろう。
中共は、ボイコットした国には激烈な報復を加えると脅しているが、G7すべてに制裁を掛ければ自らの首を絞めるだけに終わる。
もっとも、無条件参加と完全ボイコットの間には様々な中間段階がある。最もゆるい政府関係者の開会式不参加(すなわちペロシ提案)から、行進の際国旗を掲げない、選手団も含めて開会式ボイコットの順にきつくなり、最後に完全ボイコットが来る。
与党民主党の最高幹部ペロシ氏の発言により、アメリカは、最もゆるい「北京五輪に米当局者の派遣禁止」までは行くことがほぼ確定したと言える。
今後、中共を非難する声が高まるにつれて、バイデン政権始め各国政府は対応の度を上げざるを得なくなろう。
「ボイコットは無理。黙って参加するしかない」は中共にとって最も好都合な敗北主義である。日本の対応も鋭く問われてくる。
トップ写真:2022年北京冬季五輪のモニュメント(2021年2月26日 北京) 出典:Lintao Zhang/Getty Images
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