イスラエル・ミサイル防衛網の効果
Japan In-depth / 2021年6月3日 23時0分
いずれにしても近年の軍事衝突で10日間にロケット類が4000発も発射され、しかもその9割が空中で撃破されたという実例はきわめて珍しい。アメリカ側でも米軍当局や軍事専門家がこのイスラエルのミサイル防衛能力の高さに驚嘆したという報道が多数、流れている。
アイアンドームはイスラエル軍が米軍の協力を得て、2011年から実戦配備を始めた短距離ミサイル迎撃用のミサイル防衛網とされる。アイアンドームは短距離の飛翔体に対する防衛が主体だが、イスラエル軍は主敵とみなすイランの各種の中距離、長距離のミサイルへの防衛網も構築を進めてきた。
アイアンドームは防衛地区から約70キロの範囲の上空での迎撃を主任務にするという。イスラエル側の情報によると、イスラエル軍はいま全国で合計少なくとも10部隊のアイアンドームを配備している。1部隊はミサイル発射機が4機ほど、各1機がそれぞれタミールと呼ばれる迎撃ミサイル20基を保有するという。
各部隊が独自のレーダー装置を持ち、空中を飛んでくる敵のロケットやミサイルを捕捉して、迎撃するわけだ。その迎撃能力が非常に高いことが今回の軍事衝突で証明されたわけである。
これまでの軍事衝突では敵のミサイルやロケットの攻撃が自陣営を破壊することはまず不可避とされ、その被害を防ぐために予防攻撃や先制攻撃の必要性が強調されてきたが、今回のイスラエルの実例のように、敵からのミサイル攻撃を空中で無効にする能力が保持されると、ミサイルの威力自体が再考され、それにともないミサイル使用の戦闘の意味も変わってくる。
この種のミサイル防衛の効用は北朝鮮や中国の短距離、中距離のミサイル、ロケットの射程範囲にある日本にとっても貴重な教訓になるといえよう。
**この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。
トップ写真:パレスチナのロケットとイスラエルのミサイル防衛網による激しい戦闘(パレスチナ・ガザ地区 2021年5月14日) 出典:Fatima Shbair/Getty Images
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