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定額引出と定率引出 時間と数量を考えた「投資の極意」

Japan In-depth / 2021年6月13日 0時22分

■ 「毎年、決まった金額を引き出したい」に潜むリスク





この定率引出を具体的な例でみてみます。退職したら「公的年金以外に毎月10万円を引き出して生活する」といった考え方はよく耳にします。これは「定額引出」といわれるもので、使い過ぎを戒める力があります。しかし、思わぬリスクが潜んでいることも知っておくべきです。





それを理解いただくために、2つの表を用意しました。最初の表は定額で取り崩す方法を毎年の運用成績の「並び方」の違うAさんとBさんで比較しています。年数は15年間で、最初の資産額を1000万円、毎年の引出額は年初に40万円とし、残った資産を収益率と書かれている数字で運用したとします。





Aさんの場合には15年後の資産残高は879.8万円となりました。引出総額600万円とあわせると1478.8万円になりますから、当初の1000万円と比較すれば、運用を続けていた意味は十分にあります。





一方Bさんは、年数、当初の残高、毎年の引出額、ともにAさんと同じですが、収益率の「並び方」が違っています。「並び方」が違うというのは、単純にBさんの収益率は、Aさんの逆になるように設定しているだけです。15年間の平均収益率はAさんもBさんもどちらも3%に設定しましたから、当然、リスクの指標である標準偏差も同じになります。違いは、毎年の収益率の「並び方」だけということになります。





さてBさんの15年後の資産残高はというと、525.2万円。Aさんに比べて大きく毀損していることがわかります。これは、引き出し始める当初に、価格の下落が続くと元本が予想以上に毀損して、後半になって良好な成績になっても毀損した元本では回復力が弱いというわけです。





▼定額引出で起きる「資産残高の予想外の毀損リスク」









(注)イメージを持っていただくための計算例 【出所】合同会社フィンウェル研究所





■ 引き出し額を残高に対する定率で考える





資産運用では、株式や債券等の資産構成を使って長期間の収益率はある程度想定できるはずです。例えば3%といった具合に。でも毎年の収益率の並び方までは予測できません。Aさんになるのか、Bさんになるのかは、誰にもわからないのです。そこでどんな並び方であっても、しっかりと資産を残す出口戦略が必要になります。





それが前述した「定率引出」という考え方です。もう一つの表では毎年の残高の4%で引き出すというルールで計算しています。この場合、AさんでもBさんでも残高が同じになっていることがわかります。





▼定率引出の持っている「資産残高の予想外の毀損リスク」を回避する力









(注)イメージを持っていただくための計算例 【出所】合同会社フィンウェル研究所





積立投資の効用は多くの方が指摘されるようになってきたことで、よく知られるようになってきました。現役時代の若い人にはぜひとも理解してほしいものですが、一方でそろそろ退職が近くなってくれば投資からの出口戦略は必須項目になってきます。資産運用は「買う」だけでは成立しません。どうやって「売る」かをしっかり考えながら、現役時代と退職後の時代といった、長期の目線で投資の極意を実践してほしいものです。





(続く)





トップ写真:イメージ 出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images




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