マクロン仏大統領に男がビンタ
Japan In-depth / 2021年6月13日 19時47分
平手打ちをしたこと自体は「愚かで暴力的」ではあるが、個別の問題であり、社会全体が暴力化したという話ではない。相対的に考えれば今回のことは大したことではなく、それよりも問題になる暴力は配偶者によるパートナーの殺害であり、そちらには積極的に取り組んでいきたい。また、現在は、長く苦しかった抑制された期間も終わりに近づき、世の中がダイナミックに動いるところで、ポジティブに自分自身の生活を取り戻そう、失業者に仕事を見つけていこう、というメッセージを送りたいとしたのだ。
■平手打ちしたタレル被告の人物像
実際、平手打ちをしたタレル被告は、どのような人物なのであろうか。知人の証言によれば、「中世オタク」と認識されており、普段はとてもおとなしく暴力を起こす人物ではないという。
小さい頃に高知能であることがわかったものの、ディスレクシア(学習障害の一種で、知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害)のため、学習困難の問題を抱えてきた。高校卒業試験は2回受けてようやく合格したが、卒業後に葬儀屋での6か月の訓練コースは最後まで続けられずやめた。その後、工場でも勤務するが、地獄のようなペースについていけずそこも退職している。
塗装会社に勤めていた父親のもとで、14歳の頃から建設現場などで働いてもいたが、脳腫瘍で父親が亡くなり、2年前から完全無職の身だ。母親はダンスの先生である。現在は、被告は生活保護を受けており月500ユーロ(約6万6千円)を受け取りながら、月900ユーロ(約12万円)の補助を受けている視覚障害のある女性と一緒に生活している。こういった生活を送っている中、黄色いベスト運動に共感していったのだろう。
ヒトラーの著書「わが闘争」のコピーを、平手打ちした瞬間を撮っていた友人に渡したのは彼だが、修正主義者ではなく、第2次世界大戦に興味があるだけのようだ。ヒトラーの恰好を真似た写真も出てきたが、それはただの冗談で、見せたら友人や彼女らが喜んだためであり、その後、ひげは剃った。YouTubeでは、極右のチャンネル登録をしていたことがメディアでは強調されもしたが、本人は自分は極右ではなくて、右派に近い愛国者だと述べている。
事前に、「マクロンはこの国の衰退を象徴している」と語り、友人らと共にマクロン大統領に卵かクリームパイを投げることを考えていたことは事実で、何かしようとは思っていたようだが、平手打ちは計画していたわけではない。
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