金正恩、危機管理で第1書記ポスト新設
Japan In-depth / 2021年6月16日 11時57分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・朝鮮労働党第8回大会で党規約改正。
・初めて党中央委員会第1秘書(書記)ポストを新設、朝鮮労働党総書記の代理人と明記。
・これは金正恩自身が健康悪化を意識し、突発事態ありうると考え始めたから。
1月に開かれた朝鮮労働党第8回大会で改正された党規約(序文と9章60条)の内容が最近明らかになった。筆者が入手した規約内容を見ると、序文での金日成、金正日業績部分の簡略化、先軍政治用語の削除と人民第一主義用語の登場などいくつかの変更が見られたが、最も注目すべき点は、党規約第26条で、はじめて党中央委員会第1秘書(書記)ポストを新設し、朝鮮労働党総書記の代理人と明記したことだ。
■ 第1書記が新設された背景
この背景にはおそらく金正恩の健康悪化問題が関係していると思われる。ズバリ言って危機管理のためだろう。
金正恩の健康状態は、昨年4月の発作発生以降悪化が続いている。それは、2020年以降の彼の行動を見れば明らだ。金正恩の公開活動は、2020年ではわずか56回で、2013年の212回に比べてわずか4分の1に過ぎなかった。しかもその半数は党の会議を指導したもので、自然災害復旧現場への緊急視察を除くと経済視察はわずか3回、対外活動に至っては0回だった。
2021年に入っては、この傾向がさらに強まっている。金正恩の行動は、殆ど会議指導となり、現地指導はポトン(普通)門周辺住宅建設視察の2回だけだった。現地指導は全くなくなったと言っても過言ではない。
現地指導がなくなったことと反比例して、残忍で過酷な粛清が増えている。健康悪化が精神状態を過敏にし、疑心暗鬼を高めているからだろう。最近にも最高人民会議議長で党書記兼宣伝扇動部長のパク・テソン(朴泰成)を始め、多くの幹部が粛清または処刑さた。
■ 代理人は後継者なのか?
今回党規約に総書記の代理人と明記された第1書記は、後継者を意味するのだろうか?党規約の内容で見る限り代理人=後継者ではないようだ。今回新設された第1書記は、形式的とはいえ、党中央員会の選挙で選ばれる中央委員会第1書記となっている。そういった点で今回の第1書記は、2012年に金正恩が就いた推戴による朝鮮労働党の第1書記とは区別される。
北朝鮮では、最高指導者も後継者も選挙形式で決めない。白頭の血統と言われる金氏一族の中から選ばれ、金正恩の一存で決められる。そして後継者になれば権力の移譲も伴う。金正日の時も金正恩の時もそうだった。したがって権限の委任はあっても権力の移譲はないと見られる。
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