はたして世界はインフレになるのか? 欧米日覆う「不確実性」の雲
Japan In-depth / 2021年6月30日 15時0分
▲写真 新型コロナウイルス拡大で一時閉店を告げる日本料理店(2020年3月28日 米・ニューヨーク) 出典:Bill Tompkins/Getty Images
もちろん、民主主義国家では、こうした方針の転換は常に再転換の可能性がある。その意味で、今年のドイツの首相交代、来年の米国の中間選挙、フランスの大統領選挙などの帰趨は重要な意味を持つ。そうした不確実性があるので、国際金融市場もいまのところはFRBの言うことにとりあえず納得しているのだろう。
■米中経済圏の分断はどう影響するか
もう一つ、世界の需要と供給の面での不確実性は、コロナ禍後の米中対立の影響だ。思い返せば1990年代以降、30年もの間、世界経済はより統一され、ヒト・モノ・カネがいっそう自由に動くという方向に進んできた。だからこそ、ビジネスの世界でも身軽な経営、高効率化が目指されてきた。しかし今回のコロナ禍で、ヒト・モノの動きが遮断される、いわゆるサプライチェーン・リスクがあることを世界は実感した。また、米国経済圏と中国経済圏という分断が、程度は分からないが定着しそうな気配である。ヒト・モノ・カネの自由な動きが、これまでのようには期待できないことが、世界の需要と供給にどういう影響を与えるか。
よくわからないことがある状況では、様子見も合理的な選択に違いない。しかし、様子見であるだけに、何か追加的な情報が入ると、急な動きがうまれがちになる。当面の国際金融市場はそんな展開だろう。
▲写真 高齢化が進む日本(イメージ) 出典:Takahiro Yoshida/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
日本はどうか。デジタル化、グリーン化、コロナ禍対応と、いろいろな面で世界に置いていかれている感が強い。それでも世界の動きと反対にはいかないだろう。加えて、高齢化や人口減少が経済に与える影響が、じわりじわりと強くなる。それがインフレやデフレにどのような影響を与えるかも話は複雑で、結論はいろいろに考えることができる。これが当面の日本特有の不確実性だ。
不確実性の下では思い込みや決め付けは判断を誤る大きな原因になる。欧米の「大きな政府」化、米中対立、国内の超高齢化。どれをとってもこれまでになかったことだ。そうした中で、これまでインフレにならなかったからこれからもインフレは来ないと考えるのは、一種の思考停止だ。日本はもともと多くのモノについて自給ができない国だ。今後の物価を考える時、再びインフレ率が高まる可能性も心に留めておきたい。
トップ写真:イメージ 出典:Spencer Platt/Getty Images
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