空自と比空軍、初の共同訓練
Japan In-depth / 2021年7月4日 18時0分
■対中国でも意味ある比との共同訓練
フィリピンは南シナ海で中国と島嶼の領有権を争っている。軍や沿岸警備隊などは中国に対して強気の対応を兼ねてから主張しているが、ドゥテルテ大統領は「領有権問題には真正面から取り組む」との姿勢を示しながらも、中国の「一帯一路」構想に基づく多額の経済支援、インフラ整備援助、中国人労働者受け入れ、そしてコロナワクチンの供与という「ワクチン外交」で実質的には「親中国」に止まり、野党などから批判を受けている。
対中国では「優柔不断」な姿勢に終始しているドゥテルテ大統領は2022年に迫った大統領選での後継者選びが影響しているとの見方もある。
現時点で最有力の次期大統領候補の1人として世論調査結果などではドゥテルテ大統領の娘でミンダナオ島ダバオのサラ・ドゥテルテ市長が取り沙汰されている。
そうした現政権の「はっきりとしない」あるいは「はっきりとしたくない」対中姿勢とは距離を置いて、日本がフィリピン軍と関係を深めることは日米豪印の戦略対話で進められている「自由で開かれたインド太平洋」という構想には大きく貢献するものとして歓迎されている。
■フィリピンと米軍
フィリピンは米軍との間で「訪問軍地協定(VFA)」に延長問題を抱えている。VFAは1992年の米軍撤退後にフィリピン国内で米軍の活動を認める協定で、ドゥテルテ政権は2020年2月に協定の破棄を表明したが、その後破棄延長などを続けている。VFAは規定で破棄通告から180日後に失効するが、このため破棄か延長かは未だに決着していない。
米政権はVFA延長を望んでいるとされ、VFA延長問題でドゥテルテ大統領は決定権を維持してイニシアチブを握ることで交渉を有利に運ぼうとしているとされる。
一方で米国務省がフィリピンに対して新たな武器の供与を認める方針との報道も流れた。その中にはF16戦闘機やサイドワインダーなどの空対空、地対空のミサイルも含まれているといわれている。
中国への強硬姿勢を鮮明にしている米バイデン政権としては中国に」対抗する意味でもフィリピン政府、軍との関係強化に神経を使っている状況といえる。
このように中国と米国という超大国の狭間で独自の外交戦術を駆使するドゥテルテ政権の下で自衛隊がフィリピン軍と関係深化を着々と進めることは十分に意義があるのは間違いないだろう。
トップ写真:比クラーク空軍基地 出典:Gabriel Mistral/Getty Images
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