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活かせ、高齢者の2,000兆円

Japan In-depth / 2021年7月15日 19時0分

リスク性資産の定義にも拠りますが、「日本人の国民性はリスクを嫌う」なんてよく言われます。しかし、その後の急落を知っている今から振り返ると、その頃はかなりのリスク性資産を抱えていた国民だといえますね。30年くらいで「国民性」が変わるとも思えませんから、「国民性」を理由にすることがいかに危ういことか。





その後、バブル崩壊による地価の急落で、土地の評価額は2013年の678.0兆円まで低下します。その時の「個人資産」に占める構成比は24.3%です。そこから緩やかに上昇に転じ、2019年には727.8兆円になっていますが、構成比は24.0%とほぼ横ばいのままです。





■ Cash is King





一方でバブル崩壊後に構成比を高めたのが現金・預金です。「個人金融資産に占める現金・預金の比率は過去20年にわたって50%超で変わっていない」とよく指摘されますが、「個人資産」の構成比でみると、「増えている」ということがよくわかります。





1981年の段階では236.9兆円で構成比は21.3%、それが1990年には476.4兆円で17.4%でした。そこから2004年には801.1兆円、29.3%へと上昇します。この年、現金・預金は土地の評価額を抜いて、初めて「個人資産」で最大の構成比となります。文字通りCash is KINGになったわけです。その後も拡大を続けて、2009年には構成比で30%台に乗せ、2019年には1,007.5兆円と初の1,000兆円乗せ(構成比33.2%)となっています。





■ 直近10年の個人資産増の3割弱は有価証券等の増加による





この10年をみると、「個人資産」は拡大に転じているように映ります。直近のボトムは2011年の2,658.2兆円で、そこから2019年の3,032.9兆円へと14%強拡大しています。増加額は374.7兆円で、その貢献度をみると現金・預金が40.6%、有価証券等が27.1%です。有価証券等が思った以上に「個人資産」の拡大に貢献し始めているように感じます。凄いことです。





■ 現金・預金のトップ陥落はインフレで





最後に、気になるのは現金・預金がトップの座を明け渡すのはいつかということでしょうか。その場合のきっかけはきっとインフレだと思います。「インフレが来る」というのはオオカミ少年のように聞こえているかもしれませんが、この大きな枠組みでみると、現金・預金の相対的な評価額を下げるのはインフレしかないとも言えますね。





■ 高齢者の保有する2,000兆円の資産





ところで、この「個人金融」のうち高齢者が保有するのはどれくらいになるのでしょう。個人金融資産では、その3分の2以上を60歳以上が保有すると推計されていますが、土地はもっと高いように思います。





国税庁の発表による2019年の相続財産総額16.7兆円のうち土地は34.4%を占めています。個人資産に占める土地の構成比24.0%よりも大きいことからすると、土地保有は現役層よりも高齢者層に偏っていると思われます。





とすると、少なくとも3,000兆円の「個人資産」のうち2,000兆円以上は高齢者が保有しているわけで、この金額をいかに活用するかがこれからの日本経済にとって大きな課題になります。





トップ写真:高齢者イメージ 出典:Yuya Shino/Getty Images




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