米中関係、進展も悪化も兆しなし
Japan In-depth / 2021年7月28日 11時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2021#30」
2021年7月26日-8月1日
【まとめ】
・米国務副長官が訪中。王毅国務委員兼外相・外務次官と会談。
・この種の会談に大きな進展は期待できない。
・かといって、米中関係が悪化するというわけでもない。
ついに東京五輪が始まった。前回の1964年には国立競技場で行われた閉会式をこの目で実際に見た。各国の選手団が国別ではなく、皆一緒になって、しかも、楽しそうに入場してきたのを見て、とても感動した。これが「世界の平和」「日本の国際化」ということなのかと思い、小学六年生ではあったが、インパクトは絶大だった。
あれから57年経ったが、今回は雰囲気がちょっと違う。そもそも長引くパンデミックのせいか、国民の気分が今一つ盛り上がらない。緊急事態宣言は出ているが、若者はテレビなんて見ないので、一家団欒もない。スキャンダルや不祥事まみれと批判された。でも、始まってみれば、オリンピックそのものの意義は変わっていない。
確かに、昔ホロコーストを揶揄した演出担当のアーティストが解任された。開会式生中継ではイランが「アラブ諸国」と紹介されるという、まさかのハプニングもあった。だが、ペルシャとアラブの違いを正確に知る国民は少数派だろう。勿論ホロコースト・ギャグは言語道断だが、これに関連する五輪批判は「国内政治」だと感じた。
オリンピックの陰で外交関連ニュースは夏枯れ気味だ。その中で注目したのが米国務副長官の訪中である。天津で国務委員兼外相と、北京で外務次官と個別に会談したが、場所を変えるのはいかにも中国らしい。米側は「米中の厳しい競争を歓迎し、米国として競争力を強化していく」が、中国との紛争は望んでいないと述べたという。
▲写真 ウェンディ・ルース・シャーマン国務副長官 出典:Flickr: U.S. Department of State
この種の外交当局者同士の会談で大きな進展は期待できない。報道を見る限り、双方とも言うべきことを言い合ったのだろう。だからといって、これで米中関係がさらに悪化する訳でもない。外交とはそういうものだ。バイデン米政権発足後、米国務省高官が訪中するのは初めてと報じられたが、それ以上でも以下でもないのだろう。
毎週火曜日午前中、時々の興味深いテーマを厳選し、研究所内外のゲストスピーカーを招致して、突っ込んだ対談を行い、それを編集して、直ちにウェブ上に掲載している。このCIGS外交安保TVの今週のゲストは慶応大学教授でもある神保謙主任研究員で、米国と東南アジアを議論する。一度覗いて頂ければ幸甚である。
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