ペルー、急進左派政権発足でケイコ氏ピンチ
Japan In-depth / 2021年8月2日 23時0分
▲写真 モラレス元大統領(2019年) 出典:Photo by Stringer/Getty Images
新政権の経済政策の中身とともに大きな注目を集めているのが、憲法改正への動き。現行憲法はフジモリ政権時代の1993年に施行されたものだが、カスティジョ大統領は「国民の利益を守っていない」と痛烈に批判し、新憲法起草に向け制憲議会を招集するための国民投票を実施したい考え。
しかし、リマの有力メディアの報道によれば、新憲法制定に向けた国民投票の実施についてはペルーの多くの憲法学者が「違憲」と判断している。ペルー憲法第206条で改憲のためのあらゆる提案は議会の過半数で承認されねばならないと規定されているからだ。実際のところ、もしもカスティジョ大統領が憲法改正を目指す国民投票の実施を議会に提案したとしても、与党のPLは新議会の定数130議席のうち、37議席しかないため過半数を得ることは難しい。
だが、カスティジョ大統領は就任演説で改憲への強い決意を改めて示しており、PL幹部によれば、国民の署名運動を展開し、議会の反対を押し切ることを計画しているという。
■踏んだり蹴ったりのケイコ氏
一方、三度目の大統領選で涙を飲んだケイコ氏には新たな困難が待ち受けている。同氏は過去の大統領選で不正資金を受け取ったとしてペルー検査当局から起訴されており、まもなく裁判が開始される見込み。
検察側は禁固30年10月を求めている。さらに追い打ちをかけるかのように検察当局は今回の大統領選に関しても、ケイコ氏が不正資金を利用した疑いがあるとの理由で捜査を開始した。ケイコ氏は今度の大統領選で当選すれば、大統領在任中は検察の追及を免れることができたが、その可能性も絶たれた形。また、ケイコ氏の選挙公約の一つだった父親のフジモリ元大統領(人権侵害の罪で服役中)の恩赦も実現できなくなるなど、踏んだり蹴ったりの状態だ。
それでも、ケイコ氏にとって明るい材料はペルー新国会で自分らの政党「フエルサ・ポプラル」(FP)が24議席を保有し、最大野党の地位を確保したことである。「FPは依然として、ペルー政界で大きな影響力を維持する」(リマの有力政治アナリスト)との見方が有力。
▲写真 ケイコ・フジモリ氏とケンジ・フジモリ氏(2021年6月3日) 出典:Photo by Angela Ponce/Getty Images
もう一つ、ケイコ氏を喜ばせているのが、不仲だった弟ケンジ氏が選挙戦終盤で姉への支持を有権者に訴えたことだ。ケンジ氏はかつて世論調査で高い支持率を誇った有力国会議員だったが、FPの方針をめぐりケイコ氏と対立、同党を除名されたという経緯がある。再び逆境に陥った姉をどのようにケンジ氏が支えるかも、今後のペルー政治の行方に影響することになりそうだ。
(了)
トップ写真:ケイコ・フジモリ氏(2021年6月9日) 出典:Photo by Leonardo Fernandez/Getty Images
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