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中国の不自然な主要経済指標

Japan In-depth / 2021年8月20日 19時13分

中国の不自然な主要経済指標



澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)


【まとめ】


・中国の国内総生産(GDP)には、不可解な点が多い。

・中国の経済指標では、政府支出がマイナスに転じるという異常な点が見受けられる。

・2021年上半期の中国の経済状況から、政府支出の増加が予想される。



周知の如く、中国の経済指標はあまりあてにならない。特に、国内総生産(GDP)については大きな疑問符が付く。かつて、李克強首相(当時は遼寧省トップ)が「中国の統計は人工的だ」と米外交官に語った話は有名である。本稿では、中国の統計がいかに奇妙であるかを示したい。

ここでは、まず、ごく簡単に経済学の基礎をおさらいしておこう。

GDPは、投資(I)+消費(C)が基本項目である。他に、貿易収入(輸出-輸入)(X-IM)と政府支出(G)が加わる〔GDP=I+C+(X-IM)+G〕

(X-IM)に関しては、輸入が輸出よりも多い場合、数字がマイナスになる事態も起こる(中国は過去30年間で、1993年に1度だけマイナスとなった)。

他方、政府支出だが、この項目がマイナスになる事はあり得ない。必ずプラスとなる。同支出は、「政府最終消費支出」(公務員の給料支払いや事務用品等の購入)と「公的固定資本形成」(公共事業)が主な構成要素となる(本稿での政府支出は、その正確な数字が不明のため、“理論値”とする)。

一般に、GDPが投資+消費+貿易収入+政府支出の総計より大きくなったり、小さくなったりする事はない〔✖GDP>I+C+(X-IM)+G/✖GDP<I+C+(X-IM)+G〕。原則、等しくなる。




写真)北京のショッピングモールで、シャネルの前に待機する買い物客の列
中国・北京市 2021年4月18日


出典)Photo by Kevin Frayer/Getty Images


さて、中国の過去30年間(1991年~2020年)の経済状況を振り返ってみよう。1991年~2001年まで、投資・消費・貿易収入・政府支出の各項目については、あまり違和感を覚えない。




〔出所〕中国国家統計局、各年の「国民経済と社会発展統計公報」(速報値)。政府支出については”理論値”。各年の貿易黒字については、その年の米ドルから人民元への為替レート平均値。なお、1991年~2000年まで、固定資産投資に農家が含まれるのか否か不明。

同期間、固定資産投資と社会消費財小売総額は、毎年、後者が前者を若干、上回る程度で推移した。だが、2002年から固定資産投資と社会消費財小売総額が逆転し、年を追うごとに、前者が後者よりも段々と大きくなっていく。特に、08年の「リーマンショック」直後の09年頃から前者が後者の2倍近くの大きさとなった(ただ、ここ1、2年は、以前ほどの差がなくなりつつある)。


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