混乱アフガン、バイデン米大統領苦境
Japan In-depth / 2021年8月21日 23時0分
写真)英議会前の広場に集まったタリバンによる政権奪取に反対する人々 (2021年8月18日 ロンドン)
出典)Photo by Dan Kitwood/Getty Images
アフガニスタンはユーラシア大陸の内陸国でシルクロードが枝分かれする場所に位置する。古代にはギリシャのアレクサンダー大王が東方遠征した土地であり、その後もペルシャ、インドの王朝がやってきて交易が盛んだった。19世紀にはインドを植民地化した英国と南下を目指す帝政ロシアの覇権争いの場ともなっている。地政学的に重要な場所だったので紛争が多く大国に振り回されることが多かった。宗教はイスラム。14の民族と8つの言語があるといわれる。
面積は日本の1.7倍で人口は約4000万人弱。14の民族がいる多民族国家だ。1979年にソ連が侵攻し、アメリカの支援するイスラム戦士・ムジャヒディンがゲリラ戦で対応。10年後にソ連が撤退し、アメリカも手を引くと内戦が始まった。その中で力を持って政権を作ったのがタリバンだった。
アフガニスタンとアメリカの決定的な対立は2001年9月11日の国際テロ組織アルカイダによるアメリカ同時多発テロの発生からだった。当時、アフガニスタンを統治していたタリバンが国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者引き渡しを拒否したため、米英軍が空爆を開始して2001年12月にタリバン政権を崩壊させ、2011年5月米軍はビンラディンを殺害した。アメリカはその後、アフガニスタンに駐留していたが2014年に米軍のアフガニスタン駐留撤収を発表し、ガリ大統領らのアフガン政権が樹立される。しかしアフガニスタンは旧政権のタリバンとガリ大統領らの政府軍との内戦が続き混乱を極める。特に政府軍は汚職や作戦能力の弱さからタリバン軍に次々と敗北。
2018年になるとトランプ政権がタリバンと協議を開始し2020年に米軍の撤収を柱とする和平合意を締結した。トランプ政権を引き継いだバイデン新大統領は2021年9月11日(アメリカ同時多発テロが行われた日)までに米軍を完全撤収するという和平合意を、ガニ政権を追い出したタリバンと締結した。しかし、9月を待たずにタリバンは首都カブールを制圧して勝利宣言を行なった。ガニ大統領は現金を持ってアラブ首長国連邦(UAE)に逃亡してしまう。以後、旧タリバン政権の幹部が次々と首都カブールに舞い戻ってきているが、タリバン政権が、かつて行なってきた女性の教育の機会を制限、言論の統制や民主主義の抑圧なども行なうようになると再び旧タリバン政権時代の強権政治に戻ることになる。米英など多国籍軍がタリバン新政権の新しい国づくりを軌道に乗せられるか、あるいは新タリバン政権が再び強権政治に逆戻りしてしまうのか――バイデン米新政権にとってもアフガニスタンの再建は賭けに出たような心境だろう。
トップ写真)米軍のアフガン撤退について語るバイデン米大統領 (2021年8月20日 ワシントン)
出典)Photo by Anna Moneymaker/Getty Images
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