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金正恩の狡猾な新「外貨収奪作戦」

Japan In-depth / 2021年10月15日 23時44分

北朝鮮が2002年6月まで使用したこの「パクントン」は、すべての外貨が国家の所有であり、民間人が外貨を使用することができなかった時代のものだ。労働党幹部や外貨稼ぎ労働者は、当局が運営する両替所に外貨を持って行き、公式為替レートに基づいて「パクントン=トン票」を受け取り「外貨商店」などで使用した。





しかし、市場(チャンマダン)経済が大きくなる中で民間両替商も登場し、金正日政権が「7・1措置」(市場サヤ寄せ政策)に踏み切ったことで「パクントン」制度は2002年に廃止された。





3、「トンピョ(金票)」発行目的を隠蔽





ところが今回の「トン票」には「外貨と交換できる」という表記はない。なぜだろう?それは今回の「トン票」発行が外貨収奪作戦だということを隠蔽し欺瞞するためだ。





発行の目的が外貨不足を埋めるためではなく、国内経済と人民生活向上のためと偽装したのである。そのために発行目的を記した通達文書まで出した。韓国の脱北者団体などが入手したというその通達文書には、「トン票」発行目的を次のように記している。





「国の貨幣流通を円滑にして生活上の条件を保障するために、中央銀行は、トン票を発行する措置を取った。中央銀行トン票を新しく発行することに対する国家的措置は、民族貨幣制度を強固にして朝鮮労働党第8回大会が提示した闘争綱領を高く掲げて社会主義建設の新しい勝利を完遂していき人民生活を安定、向上させるための崇高な意図が込められている」





すなわち、北朝鮮貨幣が足りないので満足に生産活動ができず、人民の生活が苦しいから、「トン票」を発行すると言っているのだ。こんな欺瞞が通用するわけがない。いま北朝鮮では価値のない北朝鮮通貨が溢れている。わざわざ「トン票」を発行するまでもない。





手がこんでいるのは、この通達文書を意図的に外部に流出させたことだ。そこには米国などに外貨の枯渇を知られたくないとの思惑もあったと見られる。





一部の専門家は、極秘文書を手に入れたと喜んで、今回の「トン票」は外貨獲得のためのものでないと断じて、韓国デイリーNKなどの報道を「誤報」としているが、それは北朝鮮の謀略戦に乗せられた主張といえる。





北朝鮮内部ではこの通達文内容を額面通り受け取っている人はいない。「トン票」は外貨収奪の手段と認識しており、外貨保有者は警戒を強めている。





トップ写真:金正恩総書記のニュースを見るソウル市民(2021年5月28日) 出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images




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