米原潜不明物体と衝突、南シナ海波高し
Japan In-depth / 2021年10月17日 19時0分
これまでのところ衝突事故と中国潜水艦との直接的な関係はない可能性が高いものの、中国同様に「コネティカット」を含めて複数が常時行動しているとされる米潜水艦の動きを中国側がどこまで把握していたかに関しては、これまで明らかになっていないし、今後も明らかになることはないとみられている。
■屈指の難易度とされる南シナ海海域
今回事故のあった南シナ海は、海上交通の要衝であり海上を航行する一般船舶や漁船も多く、さらに海底の地形も複雑で絶えず変化するなど潜水艦の航行にとっては「極めて難易度の高い海域」との指摘もある。
米CNNは複数の専門家の見方として南シナ海は水上航行する船舶や海底の地形、海水の性質、潮流などによる「ノイズ(雑音)干渉」が音響環境に影響を与えて潜水艦の高度なセンサーである「ソナー」でも完全に水中の状況を把握できないという「難易度の高い海域」であると伝えている。
こうした状況が今回の衝突事故にどの程度関係してくるのかは現時点では不明であるが、複雑な海中環境の中で各国の潜水艦が行動しているという事実だけは認識しておく必要があるだろう。
▲画像 南シナ海 出典:Photo enhanced by maps4media via Getty Images
■権益と同時に各国艦艇入り乱れる海域
南シナ海は中国が一方的に自国の権益を主張する「九段線」により、南沙諸島や西沙諸島海域などでフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイなどと島嶼を巡って領有権争いが続いている。
さらに南シナ海南端に位置するインドネシア領ナツナ諸島北方海域ではインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と中国の権益海域が「一部重複する」と中国が主張。EEZの境界海域で準軍事組織といわれる海警局の艦艇を伴った中国漁船による違法操業が繰り返されて両国間の外交問題となっている事例もある。
そうした状況に加えて米を中心として中国に対抗する「航行の自由作戦」の展開で各国の水上艦艇、潜水艦、航空機が作戦行動を繰り返している。
さらに日米印豪による「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる「クアッド」、新たに設立された米英豪による「AUKUS」といった安全保障の枠組みも南シナ海を「ホットな海域」「波の高い海域」そして「一触即発」の危機をはらんだ緊張の海へと変化させている。
中国外務省の報道官も8日の会見で「米は南シナ海で波を立てている。それが(コネティカットの)事故原因だ」と指摘、南シナ海が「波高し」の海域であるとの認識を中国も共有していることを示した。
トップ画像:シーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネティカット(2018年5月7日) 出典:Photo by Smith Collection/Gado/Getty Images
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