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【ファクトチェック】自民党麻生太郎氏 の発言「年金増えたのは、運用を株でやったおかげでしょうが」は“ほぼ正確”

Japan In-depth / 2021年10月29日 14時38分

次に、「年金は80兆円増えているんですよ。年金の運用、株でやったおかげでしょうが」という発言を検証する。





「年金の運用」と言っていることから、「年金積立金」のことを指していると思われる。年金積立金は、厚生労働省が所管する独立行政法人「年金積立金管理運用独立行政法人」が運用している。





同法人のサイトによると、2021年は第一四半期末のデータまでしか出ていないので、2012年の第一四半期末と比較してみる。2021年は191兆6189億円、2012年は108兆1635円だ。その差は83兆4504億円で、麻生氏の言う「80兆円増えている」との発言は、“ほぼ正確”といえる。









▲図 2021年度第1四半期末の年金積立金運用状況の概要 出典:年金積立金管理運用独立行政法人









▲図 2012年度第1四半期年金積立金運用状況の概要 出典:年金積立金管理運用独立行政法人





次に、「年金の運用、株でやったおかげでしょうが」という発言も検証してみる。





年金の運用は国内株式だけで行ってはいない。その現在のポートフォリオを見ると、2020年から国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%となっている。





民主党が政権を担っていた時期が当てはまる2010年4月から2014年10月までは、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%だった。





過去の運用実績をみると、国内株式、外国株式のポートフォリオを倍増させた2014年以降、両株式からの収益が増加している。80兆円という含み益の大半は、国内株式と外国株式の値上がりによるものだ。





「株でやったおかげでしょうが」という発言は、正確ではないものの、こちらも“ほぼ正確”といえる。





以上の検証から、麻生氏の発言ほ、全体として“ほぼ正確”と判定できる。





一方、厚生年金の平均年金月額は、ここのところ下がり続けている。(参考:厚生年金保険 受給者の平均年金月額の推移)





年金積立金と平均年金月額は一緒に議論できないことは明らかだが、そうしたことが、麻生氏の発言に対する反発としてあるものと思われる。





確かに麻生氏の言っていることは大筋で間違いではないが、年金制度そのものに対する庶民の感覚と乖離している感が否めない。株価が上がっても投資家が儲かるだけで、株を持ってない人には関係ない。また、年金積立金の運用益が80兆円増えたこと自体は、将来の年金制度にとってプラスには違いないが、今現在において国民に恩恵が実感できるわけでもない。(参考:年金財政における積立金の役割)





政治家には、やはり有権者の感覚に寄り添った発言を求めたい。





 





【Japan In-depthファクトチェックポリシー】





Japan In-depthは、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、ファクトチェックを実施しています。FIJが定めたガイドラインに準拠して、言説の真実性・正確性の評価・判定を行います。政治家、有識者の発言、メディアの報道、ネット上拡散されている情報など、社会的に影響の大きな言説を対象とします。判定基準は以下の通りです。









トップ写真:英国と日本のパートナーシップ祝賀レセプションでスピーチする麻生太郎氏(2019年10月23日) 出典:Photo by Chris Jackson/Getty Images




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