米空母打撃群と海自護衛艦、南シナ海へ
Japan In-depth / 2021年10月31日 15時0分
今回のASEANの会議では中国の李首相がASEAN各国に対して南シナ海での紛争を防止するための「行動規範」に関して「交渉を迅速化して早期に結論をえるように」と求めた。
▲写真 全国人民代表大会閉会後記者会見に臨む中国の李克強首相(2020年5月28日) 出典:Photo by Andrea Verdelli/Getty Images
李首相はまた「南シナ海の平和は中国とASEAN各国の共通の利益である」と述べて南シナ海の問題は中国とASEAN各国の間の問題であることを強調して、「航行の自由作戦」などで海軍艦艇や空軍航空機などを展開する米英豪などの関与をはねつける姿勢を示した。
ASEAN首脳会議とそれに付随する一連の会議ではフィリピンのドゥテルテ大統領が南シナ海の「行動規範」の策定に関する話し合いは2016年にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が下した「中国が主張する南シナ海の九段線とその囲まれた海域への中国の権利主張には国際法上の法的権利はなく違法である」に基づいて行われるべきだとの立場を主張した。
中国はこの裁定を「無効である」として一切無視する姿勢を現在も取り続けており、その強固な姿勢が各交渉に妥協点が見いだせない状態を生み出す元凶となっている。
これに対してASEAN会議初参加となった岸田首相は南シナ海で緊張を高める活動や法の支配に逆行する動きがみられるとしたうえで「インド太平洋を自由で開かれた海とすることは共通の利益だ。ASEANを含む各国と深刻な懸念を共有し強く反対する」と述べて中国を念頭にその動きに釘を刺した。
バイデン米大統領もホワイトハウスによると「国際ルールに基づく秩序に対する脅威」への懸念を表明して同じように中国をけん制した。
■ 依然として「波高し」の南シナ海
ASEAN加盟各国にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国政府が進める「一帯一路」構想に基づく経済支援、インフラ整備協力、技術供与などで中国とは深い関係を維持している。
このため南シナ海問題では「主張すべきは主張する」という姿勢を示しながらも、同海域で米英豪なによる「航行の自由作戦」や日米豪インドによる「クアッド」、米英豪によるい「AUKUS」などの枠ぐみが中国と対峙することで緊張が高まることに懸念を抱いているのも事実である。
インドネシアやマレーシアのように米英豪インドなどによる南シナ海への関与が同海域での軍拡につながり、軍事的緊張を高め情勢の不安定を招来するとして危険性を懸念する声がでているのだ。
このように南シナ海はASEANにとっては中国との間で「行動規範」策定を目指して協議中という懸案の海域だが、中国と米英豪などとの間では海洋権益、航行の自由などを巡って激しい「つばぜり合い」の現場となっており、「カールビンソン」や「かが」による共同演習が実施されるなど依然として「波高し」の海域となっている。
トップ写真:インドネシアでスンダ海峡を通過中米空母「カールビンソン」 (2017年4月14日) 出典:Photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Sean M. Castellano / U.S. Navy via Getty Images
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