中国共産党100年史とアメリカ 最終回 敵対から和解、そしてまた対立へ
Japan In-depth / 2021年11月12日 23時0分
ワシントンでのこの合意も私はホワイトハウスでの取材の機会を得て、その歴史的な新展開を目前にみた。
この当時の中国共産党政権にとってはアメリカはソ連との対立への抑止戦略としても、国内の経済発展のためにも、ノドから手の出るほど欲しい連携の相手だった。
さらにまたその後、米中国交樹立からバラク・オバマ政権の末期の2016年ごろまでの40年弱の期間はアメリカ側は中国との関与政策を基調とした。
まだ弱く貧しい中国がより強く、より豊かになるように支援すれば、中国はアメリカ主導の国際秩序に責任ある一員として参加してくるだろう、国内的にも独裁から民主主義への志向をみせるだろう。ソ連への牽制ともなるだろう。そんな期待に立脚したのが対中関与政策だった。
アメリカの対中国交樹立後の歴代政権、つまりカーター、レーガン、先代ブッシュ、クリントン、二代目ブッシュ、オバマ各政権のいずれもが中国に対しては警戒をしながらも、協調や支援を基礎とする関与の政策をとったのだった。
中国にとってもまさに望むところの政策だった。
ところが中国共産党はそのアメリカの期待に外れる言動を明確にとり始めた。オバマ政権の末期、2015年ごろからの習近平主導下の共産党政権はアメリカに公然と挑戦するような動きをつぎつぎにとってきたのだ。
習近平政権の動きはあたかもアメリカの関与政策によって中国はもう十分に強くも、豊かにもなったから、それまで隠していた本音の戦略を実行に移すのだ、とでもいうような態度だった。
1970年代末に改革開放に踏み切った鄧小平が述べた「韜光養晦(能力を隠して時間を稼ぐ)」という格言のとおりの長期戦略なのだろうか。
アメリカ側はトランプ政権になって、それまでの中国への関与政策を完全に否定した。関与は間違いだったと宣言した。その理由はこの論文の冒頭でも指摘した中国側の無法、無謀な行動だった。
▲写真 トランプ大統領と習近平国家主席(2017年11月9日) 出典:Photo by Thomas Peter-Pool/Getty Images
そして中国共産党の創立から100年の2021年7月、バイデン政権下のアメリカも中国とは明確に正面から対立する、という現状になったのである。
だがその100年の米中関係は蜜月から共闘、そして衝突、さらに一転して和解、協調、またまた逆転して対決と、複雑多岐な変転をたどってきたのだ。
(終わり)
**この記事は日本戦略研究フォーラム季報2021年10月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
トップ画像:ニクソンと周恩来(1972年2月1日) 出典:Photo by © CORBIS/Corbis via Getty Images
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