習政権「第3の歴史決議」の意義
Japan In-depth / 2021年11月19日 23時0分
ここで、一つ注意すべき点がある。もともと、中国では党主席の方が国家主席よりも上に位置する。かつて、国民党は台湾で「党国体制」を敷いていた。その頃、中華民国総統よりも国民党主席の方が上位にあった。元来、国民党と中国共産党は“兄弟党”なので、組織も酷似していたのである。
現在の台湾は、民主化されて「党国体制」は消滅したが、今もなお、中国では、共産党主席が中華人民共和国主席の上に位置する。
ところで、毛沢東党主席をはじめ「四人組」が「実権派」(劉少奇や鄧小平など)打倒を企て「文化大革命」(以下、「文革」)を発動した。そのため、共産党幹部をはじめ、膨大な数の人々が犠牲になった。
実は、1981年6月に発布された「第2の歴史決議」こそ、中国共産党にとって歴史決議の名にふさわしいと思われる。その中で「文革」が否定され、党の「集団指導性」が確立された(なお、毛沢東への評価は、「功績が第一で、過ちが第二」とした)。
▲写真 共産党創立100周年記念式典で、天安門の上にある故・毛沢東主席の肖像の上で観客に手を振る中国の習近平国家主席(北京、天安門広場 2021年7月1日) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
今度の「第3の歴史決議」は、中国共産党100年の歴史の総括である(1989年の「天安門事件」は「民主化」を求めた学生・民衆らによる「動乱」への“正当な武力鎮圧”とされた)。今回、第18回党大会(2012年~現在)以降の習政権の功績について重く扱われた。それは、「習近平新時代の中国的特徴を持つ社会主義思想」と表現され、習政権の政策を包括的に肯定している。
その結果、事実上「第2の歴史決議」の内容が覆された。党の「集団指導制」よりも習近平主席への「個人崇拝」が容認され、習主席が発動した「第二文革」も肯定されている。習政権は「第3の歴史決議」で、今までの「鄧小平路線」を完全に否定したと考えられるだろう。
周知の如く、毛沢東は「建国の父」である。外国勢力を中国国内から一掃した功績は大きい。また、最高実力者と謳われた鄧小平は「改革・開放」で中国経済を成長させた。現在、中国の発展は、鄧小平のお陰だと言っても過言ではない。
では、習近平主席には、毛沢東や鄧小平に匹敵する実績があるのだろうか。強いて挙げるとすれば、王岐山と一緒に敢行した「反腐敗運動」くらいである。ただし、この“恣意的” な「反腐敗運動」は、習主席が政敵を打倒するための手段だった。
他方、習近平政権の誕生以来、中国経済は右肩下がりで低迷している。
(1)「混合所有制」改革を導入し、(2)「第二文革」を発動し、(3)「戦狼外交」を展開しているからに他ならない。
また、近年、習政権はIT関連企業、芸能界、果ては学習塾も叩いている。今更、「共同富裕」を言い出しても、国内では絶望的な貧富の差が生じている。結局、共産党は「第3の歴史決議」を公にし、“自滅への道”を暴走しているのかもしれない。
トップ写真:全国人民代表大会に出席する習近平国家主席(北京、人民大会堂 2021年3月11日) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
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