左右二極分化で大接戦 チリ大統領選決選投票
Japan In-depth / 2021年12月1日 7時0分
■右派候補当選なら新憲法づくりに支障も
チリでは7月に発足した制憲議会がピノチェト軍政期(1973-90年)に制定された現行憲法に代わる新憲法づくりに向けた作業を行っている。現行憲法が格差拡大の元凶になったとの批判が強まる中、根本的な改憲がなされる見込みである。制憲議会は来年夏ごろまでには草案を仕上げ、3分の2の賛成で承認されれば、その後国民投票にかけられる。格差解消実現に向けどのような内容になるかが最大の焦点。
新自由主義に反対をする左派のボリッチ氏が大統領に当選すれば、制憲議会の多数派を占める左派陣営が勢いづくのは確か。だが、現行憲法の維持を主張する右派のカスト氏勝利なら、新憲法づくりの展望はがらりと変わる。カスト氏は大統領に就任すれば、制憲議会の憲法草案作成プロセスを阻止すると明言している。
▲写真 チリのサンティアゴで行われた大統領選挙の終了時に支持者と話す左派政党のガブリエル・ボリック候補。 出典:Photo by Marcelo Hernandez/Getty Images
■南米の“左派ドミノ”流れに影響も
南米主要国でこのところ、左翼政権の台頭が目立っている。
ペルーで7月末、急進左派のカスティジョ政権が発足したのは周知の通り。コロンビアでも、経済格差に抗議する大規模な反政府デモや全国規模のストが頻発、来年5月に予定される大統領選に向け左派陣営が、変革を求める市民らを取り込んで勢力を伸ばす可能性が指摘されている。ボリビアでは昨年、一足先に左派政権がスタートし、ペルーのカスティジョ政権との連携に動く気配もある。アルゼンチンのフェルナンデス中道左派政権はこのところ、左翼色を一層濃くしている。ブラジルでは来年行われる大統領選に左派のルラ元大統領が出馬することが有力視されており、最近の世論調査では同氏の支持率が右派のボルソナロ現大統領を上回っている。
チリの決選投票は南米の「左派ドミノ」が一段と強まるのか、それとも沈静化のきっかけになるのかを占うことにもなりそうだ。(了)
トップ写真:2021年11月21日、チリ・サンティアゴで行われた大統領選挙の終盤、支持者と話をする共和党のホセ・アントニオ・カスト候補者。 出典:Photo by Claudio Santana/Getty Images
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