米国防総省、インド太平洋を最重要と位置づけ
Japan In-depth / 2021年12月3日 11時44分
報道によれば、国防長官が部隊の展開場所や戦力、戦略などにつき検証を指示したそうだが、世界に展開する米軍の体制見直しだから、その範囲は極めて広い。インド太平洋では豪州に巡回駐留する米航空兵力の規模拡大と韓国への攻撃ヘリコプター部隊常駐などが含まれるというが、対象はインド太平洋だけではないのだ。
欧州方面では、ロシアに対する抑止強化やNATOの活動効率化を、中東では核開発の加速や域内の武装勢力支援を続けるイランやイスラム過激派によるテロに対する国防総省の取り組みを再評価すると報じられた。しかし、あれもこれもと言っている時代ではない。優先順位付けはワシントンで最も難しい仕事だが、大丈夫なのか。
更に、気になるのが「イラン核合意正常化」関連交渉だ。米国とイランは中断していた間接協議を今週ウィーンで再開したようだが、両国の隔たりは変わっておらず、歩み寄りは容易ではない。イラン側は無条件で全ての制裁解除を求めているが、バイデン政権はイランの「テロ活動」や人権侵害に関する制裁を維持したいからだ。
筆者は最初からこの「イラン核合意」には懐疑的だった。最終的にイランの核兵器開発の「芽」を取り除くことができなかったからだ。しかし、だからといって、この合意から一方的に離脱するのは如何なものか。この合意が不完全であることを認めた上で、更なる交渉をするのが常道である。その意味でトランプ政権の罪は大きい。
〇アジア
韓国の大統領選まであと3カ月になった。与野党の候補が出揃いつつあり、事実上の一騎打ちになるらしい。報道によれば、与党有力候補の「外交ブレーン」は日韓のGSOMIAにつき、「国家間合意はむやみに破棄はできず、尊重しなければならない」と述べたそうだ。おいおい、それなら、まずは1965年の国家間合意から尊重しては如何だろうか。
〇欧州・ロシア
大統領選といえばフランスでも来年4月に投票がある。最近「イスラム文明がフランス国民に置き換わろうとしている」などと主張してきた極右系論客が立候補を表明したそうだ。再選を目指すマクロンに加え、極右候補が二人も立候補することになる。これが欧州にとって何を意味するのか、単なる偶然なのか、詳しく分析する必要がある。
〇中東
トルコが近年緊張関係にあった湾岸アラブ諸国との関係改善に本格的に乗り出し、中東地域での「米国抜き」の秩序形成が加速する可能性もある、などと某通信社が報じた。でも、そうかなあ。トルコはそれを望んでいるかもしれないが、湾岸アラブ諸国が「米国抜き」の国際秩序で生き残れないことは、彼ら自身良く分かっている筈だ。
〇南北アメリカ
ホンジュラス大統領選で「当選したら中国と国交を結ぶ」と発言した野党候補が優勢となっているらしい。実際に断交するかは未知数だそうだが、最近中米ではエルサルバドル、パナマ、ドミニカ共和国が台湾と断交し、中国と国交を樹立している。ホンジュラスをめぐる米中の競争がどうなるか、興味津々だ。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは来週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:日米豪印の4か国(クアッド)による首脳会談(2021年9月24日) 出典:Photo by Pool/Getty Images
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