アメリカが鳴らす尖閣危機への警鐘
Japan In-depth / 2021年12月3日 18時0分
・2020年11月には日本政府は中国艦艇が日本側の接続水域に年間通算306回、侵入したことに対して中国政府に強い抗議をした。その結果、日中関係はさらに緊迫し、習近平国家主席の国賓としての日本訪問という計画にも影響を及ぼした。
以上のアメリカ国防総省の報告書の記述は日本側でも確認され、中国側も積極的に発表している「侵入」の記録だが、アメリカ側がこの中国側の2020年からの新しい尖閣攻勢激化をきわめて強く警戒している点が注目される。
このアメリカの姿勢は尖閣諸島への中国の軍事がらみの攻勢の激化がいよいよ危機を高め、日中関係の緊迫を増していることへの深刻な懸念の表明だといえる。
しかし同報告書は緊張を増す尖閣諸島の領有権問題についてアメリカ政府の立場をも改めて以下のように記していた。
・アメリカは尖閣諸島の主権に対しては特定の立場をとらないが、日本の尖閣諸島への施政権は認めて、同諸島が日米安全保障条約第5条の範疇に入ることを確認し続ける。さらにアメリカは日本の尖閣諸島への施政権の侵害を求める、いかなる一方的な行動にも反対する。
いうまでもなく日米安保条約の第5条は日本の施政権の及ぶ領土や領海への外部からの軍事攻撃に対してはアメリカが同盟国として日本との共同防衛にあたることを責務としている。
しかし日本側のその施政権がいまや中国側艦艇の自由自在かつ頻繁で継続的な侵入によって脅かされつつある現状にはアメリカとしても切迫した危機感を抱く、ということだろう。
日本にとっての固有領土の喪失という国難がすぐそこまで迫った現実に対してアメリカ側の国防総省の公式な報告書までが重大な警鐘を鳴らすようになったわけである。
**この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに掲載された古森義久氏の論文の転載です。
トップ画像:尖閣諸島周辺を警戒監視する巡視船 出典:海上保安庁
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