チリ新政権の行方とブラジル大統領選が焦点「2022年を占う!」中南米政治
Japan In-depth / 2021年12月30日 19時0分
チリでは今、社会・経済格差是正を求める左派陣営が多数派を占める制憲議会で新しい憲法の草案づくりが行われている最中で、“ボリッチ大統領”登場によって左派が一層勢いづき、草案内容が急進的性格を強める可能性がある。
しかし、その一方、ボリッチ氏が公約の穏健化を余儀なくされるとの見方もある。
上下両院選挙の結果、同氏は少数与党政権を率いることになり、現政権の流れをくむ中道右派政党連合が両院で最大勢力として立ちふさがる状況が予想されるためである。チリ・カトリカ大のある政治学者は「新大統領は中道勢力の支持を必要とするため、公約内容を左から中道寄りに修正せざるを得なくなろう」と指摘、ボリッチ新政権がどのような方向に向かうのかは、中南米各国の政治動向にインパクトを与えると語る。
■ コロンビア大統領選も左派優勢か
メキシコからアルゼンチンまでこの地域の左派ないし、中道左派政権はこぞって、チリ大統領選での左派勝利を歓迎し、連帯を表明した。
とりわけ、隣国ペルーの急進左派カスティジョ政権は右派勢力の攻勢によって苦境に立たされているだけに、チリ大統領選の結果を自らの政権立て直しへの“追い風”にしたいとの姿勢がありあり。
来年5月に大統領選を控えるコロンビア大統領選への影響も中南米ウォッチャーの間では取り沙汰されている。同大統領選をめぐっては左派の政治家、グスタボ・ぺトロ氏が有力視されている。
▲写真 コロンビア大統領選で有力視されている元左翼ゲリラ組織幹部のグスタボ・ぺトロ氏。 出典:Gabriel Aponte/Getty Images via 2018 Americas Initiative Presidental Debate
ペトロ氏はかつての左翼ゲリラ組織「M-19」幹部で、同組織が1990年に武装解除し、合法政党に転向したのを機に政界に進出、上院議員やボゴタ市長を務めた。前回2018年の大統領選の第1回投票で2位につけ決選投票に進出したものの、右派の現ドゥケ大統領に敗れている。
コロンビアの有力新聞「エル・エスペクタドル」は「チリ大統領選結果を受け、変革を求めるコロンビアの若者や左派勢力が結集すればぺトロ氏当選の可能性がある」との現地政治アナリストの見方を紹介している。
▲写真 ブラジル大統領選で優勢が伝えられる左派・ルラ元大統領(2021年12月10日) 出典:Marcos Brindicci/Getty Images
さらに来年10月には中南米の大国ブラジルで大統領選が実施される。現地の支持率世論調査によれば、左派のルラ元大統領が、再選を狙うボルソナロ現大統領を大きく引き離しトップを走る。
チリ大統領選で一層強まった感がある左派勢力の台頭が来年も続くのか否か、この地域での影響力が大きいブラジル大統領選がカギとなりそうだ。
トップ写真:チリ大統領選に勝利後、支持者に語りかけるガブリエル・ボリッチ氏(2021年12月19日 チリ・サンティアゴ) 出典:Marcelo Hernandez/Getty Images
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