バイデン外交の回顧と展望 私の取材 その2 アフガニスタンでの大失態などの不安定要因
Japan In-depth / 2021年12月31日 11時0分
▲写真 AUKUS発足に伴い、バイデン米大統領(左)はマクロン仏大統領(右)を激怒させた。写真は英コーンウォールで開催されたG7サミット全体会議に出席する2人(2021年6月13日) 出典:Phil Noble - WPA Pool/Getty Images
同じNATO加盟国でも、フランスはイギリスとは異なり、時折アメリカとの関係が微妙になることがあるが、それでも同盟国である。こうした事態は、NATOの米欧同盟国同士の間ではこれまでなかったことだ。
バイデン政権は「同盟国との絆、国際協調を重視する」と語っていたにもかかわらず、フランスへの配慮を欠いた。バイデン政権としては、ディーゼル推進型よりも原子力潜水艦の方が対中戦略上有利だと考えて、オーストラリアへの供与を決めたのだろうが、発表の仕方、あるいは物事の進め方がフランスを激怒させてしまったということだ。イギリス以外のヨーロッパ諸国も、フランスの対応に同調しているようだ。
第3の不安定要因は、外交と内政が重なる領域の不法入国者問題である。
現在、メキシコ国境からアメリカへの不法入国が急増しており、拘束者数は毎月数万人から10数万人に上っている。この1年では拘束者の合計は160万ともなった。その理由は簡単にいえば、バイデン政権の移民政策がトランプ政権とは反対に寛容だからだ。
バイデン政権は発足後まもなく、メキシコ国境の壁建設を中止した。また、バイデン政権になってから、不法入国者をほとんど強制送還しなくなった。
アメリカに入国したいという人は、メキシコよりもホンジュラス、エルサルバドルなどの中米諸国の国民が多い。そうした人たちはメキシコのアメリカ国境から入ってくる。報酬を得て、アメリカに不法入国させるシンジケートもできている。
▲写真 アリゾナ州ユマにある米国とメキシコの国境で、米国国境警備隊に拘束される移民の家族たち(2021年12月07日) 出典:John Moore/Getty Images
トランプ政権時代には、子供だけで不法入国した場合にも送還していたが、バイデン政権は、子供だけで入ってきた場合にはアメリカの中に留め置く政策に転換した。子供が入国できれば、後にその家族や親戚も入国できる可能性があるため、子供だけがどんどん入ってくるようになっている。
テキサス州のメキシコ国境から、7歳と5歳ぐらいの中米の女の子が不法入国する様子が、テレビで放送されたことがある。これは、アメリカの国境警備当局の関係者がビデオで撮影したもので、密入国斡旋の業者たちが数メートルの壁越しに手を伸ばして女の子たちをアメリカ側にぽとんぽとんと落とす光景だった。子供たちは2、3メートル下に落ちたが、元気に立ち上がり、闇の中に消えて行った。
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