偵察総局元大佐キム・グッソン氏が語る北朝鮮 第3回 張成沢処刑と金正男暗殺の背景
Japan In-depth / 2022年1月22日 23時0分
写真)2001年5月1日に偽造パスポートを持って日本に入国し、国外追放され、中国に送還される金正男容疑者 2001年5月4日 東京・成田国際空港
出典)Photo by Yamaguchi Haruyoshi/Corbis via Getty Images
そしてこのテロ集団を指揮しているのは、韓国に亡命したイ・ハニョン(金正男の母方の叔父)暗殺(2007年)を実行したリ・ヨンヒとういう人物で、彼はイ・ハニョンを暗殺したことで平工作員から対外連絡部2課の課長にまで大出世したが、その後増長して不正を働いたために、党を除名され一時江原道の炭鉱に10年間追放されていたとのことだ。
ところが、暗殺部隊19課の新設で呼び戻され、九死に一生を得ただけでなく、課長の地位まで与えられ、金英哲(キム・ヨンチョル)直属となったという。
この19課は、その任務の重要性から顧問職を置いたのだが、その顧問は他でもない「ラングーン爆破事件」(1983年)時の35号室副室長ホ・ギョンギだと明らかにした。彼が所属していた作戦部傘下の715連絡所(沙里院)も19課に編入されたと話している。
金正男暗殺を実行したのは、一部で指摘されていた国家保衛部ではなく、偵察総局19課が実行部隊だったのである。また書記室が動いたとの説もあるが、書記室は権力行使の権限がないので、それも間違いだとした。
キム氏は、金正恩総書記のもう一人の兄金正哲(キム・ジョンチョル)についても韓国で誤った情報が流されているとし、一部で報道された金正哲を中心にした上級幹部2世たちの集まり「ポンファ(烽火)組」も「実体のない組織」だと明らかにした。
キム氏は「金正哲は人にも会えず、社会と完全に断絶された人生を送っている」と語り「ポンファ組は偵察総局傘下で、金正日の安全と健康を専門に研究・支援する『ポンファ研究所』が間違って伝えられたものだ」と語った。
3)経済制裁で金正恩政権は倒れない
キム氏は、金正恩が義理の叔父・張成沢を処刑し長兄金正男を暗殺した背景を語る中で、「経済制裁やチャンマダン(市場)の拡大だけで金正恩政権は崩壊しない。それは何百万人が餓死しても、金正恩が良心の呵責を覚えないからだと述べ、また北朝鮮はすでに「奴隷国家」となっているために経済的圧迫だけでの政権崩壊はないだろう」と強調した。
そして「北朝鮮の首領独裁と他の独裁との違いは、最高指導者から危険と見なされたら即「処刑」につながるというところにある。それで人々は反抗できずに奴隷化する」と語った。
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