中国現代ドラマの抱える問題点
Japan In-depth / 2022年1月24日 12時14分
他方、現代ドラマでアフレコが採用されるのは、当局が脚本に関してセリフをチェックしているからという説もある。確かに、アフレコならば、事前にセリフを確認できるので、政府批判等の心配がないだろう。
第3に、現代ドラマは、撮影場所に、大概、上海が使用される。あたかも撮影場所が当地に限定されているかのようである。
確かに、上海は街並みが美しい。また、「現代的」なビルが林立している。誰でも、そんなビルの中にある素敵なオフィスで働いてみたくなるだろう。他方、学校(特に大学)の建物が綺麗で、キャンパスも広々としている。こういう学校ならば、学生は学習意欲も湧くのではないか。
無論、中国には上海だけでなく、たくさんの都市がある。必ずしも上海にこだわる必要はない。だが、例えば、北京では、人々が(PM2.5に代表される)大気汚染に悩まされている。また、昼間でも曇った感じで撮影が容易ではない。だから、首都での撮影は避けられる向きがある。
一例を挙げると、戚薇主演の『北京女子図鑑』(2018年)である(水川あさみ主演『東京女子図鑑』〔2017年〕のリメイク版)。ドラマ中、北京で、喉の調子が良くない主人公が、空気清浄機を注文する場面があった。
写真)『北京女子図鑑』(2018年)主演の戚薇
出典)Photo by Darren Gerrish/WireImage
一方、(景勝地を除く)地方だと、中国の貧困状況が浮き彫りになる恐れがある。中国共産党は、貧しい“田舎”を隠したいのではないか。ひょっとすると、当局の指導で、地方での撮影が許可されないのかもしれない。北京政府としては、“田舎”の貧困状態を映像として国内外に見せたくないだろう。
ただ、黒竜江省等の中国東北地方では、冬、雪の多い場面で撮影が敢行されている(例:鄧家佳主演『バーニング・アイス(原題:無証之罪)』2017)。雪が同国の“田舎”の貧しさを覆い隠すのかもしれない。
以上のように、中国では現代ドラマ制作には様々な制約がある。
話は変わるが、一般に、中国の映画ドラマと台湾のそれらは、同じ北京語(台湾では“国語”という)が使用される。そのせいか、一緒くたにされ「華流」と呼ばれている。ところが、両者には様々な違いが見られる。したがって、中台の映画ドラマを併せて「華流」と呼称される事に違和感を覚える人もいるのではないか。
近年、台湾では、台湾語の映画が復活した。かつて「光復」(台湾が日本の支配から脱した)後、一時、台湾語映画が流行していた。だが、その後、台湾語映画が衰退し、北京語映画が盛んになった。目下、当地では、再び台湾語映画も多数制作されている。
現在、台湾の映画ドラマは、中国のそれらに比べ、テーマがバラエティに富んでいる。また、撮影場所も様々で、特定化されない。今の台湾は、戒厳令下(1949年~1987年)の台湾とは異なり、自由に映画ドラマを制作できる。「民主化」のお陰と言っても過言ではないだろう。
写真)『救急救命科のドクター(原題:急診科医生)』(2017年)主演の王珞丹
出典)Photo by Antony Jones/Getty Images
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