ウクライナ危機と台湾海峡危機
Japan In-depth / 2022年1月30日 23時0分
ちなみに、韓国としては、同国一国で貧しい北朝鮮を併合するのはあまりにも負担が大きい。他方、日本は核を保持したままの「統一コリア」誕生を快く思わない。また、南北朝鮮が統一される際、戦争が起こる公算も大きい。日本にも甚大な被害が及ぶ事も考えられる。だから、中ロ・日韓は、陰に陽に、今の北朝鮮を支えているのではないだろうか。
閑話休題。最近、ロシアのウクライナへの侵攻と中国の台湾への侵攻をパラレルに捉える人がいる。彼らの主張は、次の通りである。
もしロシア軍がウクライナに侵攻した場合、米軍は必ず同国を軍事支援するだろう。その時、米国はウクライナと台湾海峡での戦いという、同時「2正面作戦」に直面する。その間隙を突いて、中国軍が台湾へ侵攻するかもしれない、と。
一見、ロシア対ウクライナと中国対台湾は、似た図式に見えるだろう。
ところが、この発想は「今日の香港は、明日の台湾」という“スローガン”と変わらないのではないか。実際、香港と台湾では、まったく状況が異なっていた。それにもかかわらず、香港と台湾が同列に語られていた時期がある。
第1に、香港は中国大陸と地続きである。また、ウクライナもロシアと長い国境線で接する。ところが、台湾は中国大陸とは海で隔てられている。
第2に、香港はかつて英国植民地だった。また返還後、中国の「一国二制度」下に入る。ウクライナもソ連邦時代、同国の一部として併合された。だが、台湾(中華民国)は中国(中華人民共和国)に統治された事実はない。台湾は日本統治から脱して以来、一貫して中国から独立している。
第3に、米国には“香港防衛のための法律”、あるいは“ウクライナ防衛のための法律”が存在するのだろうか。寡聞にして知らない。
実は、1979年、米国は「台湾関係法」という国内法で台湾人の生命・財産・基本的人権を守ると約束した。つまり、米国は台湾を同国の準州(グアムや北マリアナ諸島のサイパン)と同じように位置付けたのである。
しばしば米国は、台湾防衛を明確化しない「曖昧戦略」を取ってきたと言われる。けれども、それは米国の中国に対する見かけ上の“外交的ポーズ”に過ぎないのではないだろうか。
第4に、1997年、香港が英国から中国へ返還された際、同地に中国人民解放軍が配備された。だが、人民解放軍が台湾に駐屯した事はない。それどころか、2005年以降、台湾には秘密裡に、米軍が配備された(数は不明)。また、2018年、米国在台協会(AIT)の新庁舎が台北に設立されて以来、米軍が駐屯している(同)。
ところで、無論、現在、ウクライナにロシア軍は駐屯していない。ただし、同国東部には、「親ロシア派」のロシア系住民が住んでいる。かつて台湾にも、「親中派」の外省人が多かった。だが、彼らは「本土派」に変わりつつある。将来、ロシア系住民が愛国者へと変わる可能性も捨て切れないだろう。
トップ写真:ウクライナにジャベリン対戦車ミサイルなどの武器を輸送する米軍機(2022年1月25日、ウクライナ・キエフ近郊のボルィースピリ空港) 出典:Photo by Sean Gallup/Getty Images
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