ウクライナの「フィンランド化」?
Japan In-depth / 2022年2月20日 7時0分
前述のコラムニスト、フリードマン氏は、ロシアのNATOの東方拡大への懸念に理解を示し、「NATOとロシアは、ウクライナがかつてのフィンランドのように地政学的に中立となることに合意すべきだ」との見方を示した。そのうえで、「ロシアのプーチン大統領は、実際にはウクライナのNATO加盟を恐れておらず、本当に恐れているのはウクライナがいつの日かEUに加盟することだ」と述べた。同氏は、これにより、ウクライナは脆弱な民主主義体制を強固なものにし、国内政治の腐敗と専制的な“プーチン主義”を締め出すことができると付け加えた。
ウクライナのNATO加盟については、同国のゼレンスキー大統領は、「希望している」とし、意欲を示している。一方、ロシアはNATOの東方拡大停止を求めているが、ドイツのショルツ首相は2月15日、モスクワでのプーチン大統領との共同記者会見で、「(ウクライナの加盟は)議題になっていない」{私たちが在任している限り、提起される問題ではない」と述べた。
ウクライナはEU加盟を目指しており、その前段階として2014年3月21日に、両者は政治経済関係を一層緊密化するために「連合協定」に調印。これは、EU域内では加盟の前段階とみられている。フリードマン氏は、ロシアはウクライナとEUの関係緊密化に危機感を抱き、同年2月から3月にかけて、ウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、ウクライナ東部ドンバスで親ロシア派の武装勢力への支援を開始したと指摘した。
フリードマン氏は、ウクライナ危機の本質は、NATO軍がロシア国境に迫ってくることだけではなく、EUが勢力圏を拡大し、ウクライナがロシアなしでもやっていける、民主主義的な自由経済に生まれ変わることだと断じた。
▲写真 フォートキャンベル米陸軍航空基地からポーランドに向かう、米空軍第101空挺師団の兵士たち(2022年2月15日、ケンタッキー州・フォートキャンベル) 出典:Photo by Seth Herald/Getty Images
■ 勢力圏争い
ウクライナ危機は、米ロ間の情報戦やウクライナへのサイバー攻撃も含む「ハイブリッド戦争」の様相も帯びてきており、米欧とロシアの対立だけでなく、EUとロシアの勢力圏争いという長期的な課題も見え隠れしている。
イデオロギー対立が色濃く影を落とした、米ソ間の東西冷戦時代と比べて、米欧のNATOとロシアの対立の背景には民主主義と市場経済を理念とするEUの浸透力が強まっている状況があると言えそうだ。
(了)
トップ写真:ロシアの侵攻に反対し、連帯を示すデモ行進するキエフ市民(2022年2月12日、ウクライナ・キエフ) 出典:Photo by Chris McGrath/Getty Images
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