プーチン氏、「戦略的判断ミス」か
Japan In-depth / 2022年2月23日 19時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
【まとめ】
・ロシア対ウクライナ「軍事侵攻」、事実上占領してきた2地域に傀儡政権を樹立。
・いくら頭脳明晰のプーチン氏でも「老い」と「感情」には勝てない。
・単に「戦略的判断を誤った」可能性はないか。
「8年越し」のロシアによる対ウクライナ「軍事侵攻」が22日に「再開」され、今回ロシアは事実上占領してきた2地域に傀儡政権を樹立しただけでなく、ウクライナ国内の他の領域をも狙う軍事的動きを見せている。こうした状況もあり、今週の外交安保カレンダーは掲載を遅らせざるを得なかった。その点どうかご理解願いたい。
さて、今週はプーチン大統領の判断を分析したい。筆者は、彼が対外的に述べたロジックを前提に彼の意図を議論するだけでは現状は説明できないと思っている。筆者が懸念するのは、今回プーチン氏がその冷徹な情勢分析に基づく周到な作戦を実行に移したのではなく、単に「戦略的判断を誤った」可能性はないかということだ。
二週間前筆者はこう書いた。「最近米情報機関や政府高官はしきりに『早期のロシア軍侵攻とキエフ陥落』の可能性を喧伝している。これはバイデン政権一流の『宣伝戦』か、それとも『正確な情報』なのか」と・・・。どうやら、情報は正確だったが、つい最近まで日本国内には、ロシアの「侵攻はない」「陽動作戦だ」と一蹴する向きもあった。
そうした経緯もあり、同じく二週間前、筆者は「これら様々な情報は、『侵攻などあり得ない』と言い切った専門家たちの見解も含め、数週間後には、きっちりと、検証させてもらおうか」とも書いた。決して喧嘩を売るつもりはないのだが、どうやら今、その種の検証を始める時期が到来したように思う。
それでは、これら「侵攻なし」論者の判断は間違っていたのか。そうとも思わない。彼らのロジックは極めて論理的、合理的だ。いくら米中覇権争いの中で「絶好のチャンス」が到来したとしても、現時点でロシアの軍事侵攻は「得るもの」よりも「失うもの」の方がはるかに多い。されば、「軍事侵攻」の可能性は限りなく低いはずだ、と・・・。
筆者も当初はそう考えていた。しかし、途中からロシアの限定的な「軍事侵攻」はあり得ると思うようになった。その最大の理由は、プーチン氏が「誤算する」可能性を感じ始めたからだ。いくら頭脳明晰のプーチン氏でも「老い」と「感情」には勝てない。今回の決定が彼の「英断」か、「戦略的判断ミス」かは来週以降明らかになるはずだ。
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