なぜ日本のマスメディアは遺体を見せないのか
Japan In-depth / 2022年3月15日 15時0分
出典)Photo by Alexey Furman/Getty Images
番組でも話したが、日本のマスメディアが遺体の写真や動画を流さなくなって久しい。いつからかも判然としない。1970年、三島由紀夫が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地内に立てこもり、割腹自殺を行った時、新聞の号外に三島の生首が映った写真が掲載された。
また、1980年の新宿西口バス放火事件の時はバス車内の遺体の写真が新聞に載って社会に衝撃を与えた。その後、筆者にはマスメディアにあからさまに遺体の写真が使われた記憶がない。
写真)自衛隊駐屯地で自衛官らに檄を飛ばす三島由紀夫 1970年11月15日 東京都・市ヶ谷
出典)Bettmann/GettyImages
これだけ長く遺体の映像を封印してきたマスメディアが突然、それを解くとも思えない。
問題は、遺体の写真や映像を扱わない理由だ。それも実は明確ではない。死者への尊厳や遺族感情への配慮、プライバシー、など理由は色々あがっているが、つまるところ、「自粛」以外の何物でも無いだろう。もしくは、何も考えずに「お蔵入り」にしているだけと推察する。(読者や視聴者からクレームが来るから)「どうせ使えないよね」、と。こうなると完全に「思考停止」だ。
ジャーナリズムを謳うなら、少なくとも遺体や残酷なシーンが映っている写真や映像を使うかどうか、編集部内で議論すべきだし、それ以前に各社なりの基準があってしかるべきだろう。もしそれらのコンテンツを使う場合は、読者・視聴者にきちんと説明した上で公開すべきだ。
Japan In-depthでは、災害や事件・事故、そして戦争などを報じるとき、読者に現実に起きていることを伝えるために必要と判断した写真・動画は積極的に使う方針だ。
欧米メディアと同じスタンスをとれといっているわけではない。イエロージャーナリズムでもないかぎり、何でもかんでも過激なコンテンツを流せば良いというモノではない。マスメディアには、本当にそのコンテンツを使う意味があるのかどうか、じっくり検討してもらいたい。
「過剰な自粛」や「思考停止」はジャーナリズムの死を意味する。
トップ写真)イルピン通りに横たわる市民の遺体。2022年3月6日、ウクライナ・イルピン
出典)Photo by Murat Saka/ dia images via Getty Images
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