ウクライナの中国に対する本音
Japan In-depth / 2022年3月15日 19時38分
仮に、その時、中国がウクライナから「ヴァリャーグ」を購入していなかったら、現在、中国は空母を保有していなかったかもしれない。
次に、2008年、中国で夏季五輪が開催された際、ウクライナの研究機関は北京五輪を防衛するため対ミサイル装置を提供した。イージス艦に似たレーダーシステムで、中国の軍艦に搭載されているという。
なお、2005年、ウクライナ検察は、中国がウクライナの武器商人から6発の巡航ミサイル(核弾頭を搭載可能)を入手したと指摘した。確かに、この話は、キエフが直接、北京へ売却したものではない。国外へ密輸され、違法に販売されているからである。ただ、この兵器売却には、レオニード・クチマ元大統領の官僚が関与していたという。
第3に、中国ウクライナ関係の変遷である。
1991年、ソ連崩壊後、中国とウクライナは互いに警戒しながらも、歩み寄った。1989年の天安門事件以来、中国は、米国やEUからの武器購入を断たれている。北京は、ロシアが中国に売却しない先端軍事技術を、キエフが喜んで売ることを知った。
他方、ウクライナの国防関係サプライヤーにとって中国は大きな市場であった。また、キエフは、中国をロシアに対する地域的均衡勢力と見なしたのである。
しかし、2014年以降、ロシアによる第1次ウクライナ侵攻の余波で、キエフがNATOへの加盟を優先し、米国やEUと緊密に連携しようとした。そのため、北京とキエフの戦略的パートナーシップは、冷え込んでいる。
▲写真 戦略的パートナーシップを締結する、ウクライナのミコラ・アザロフ首相と中国温家宝首相(2011年4月18日、中国・北京) 出典:Photo by Kyodo news - Pool/Getty Images
実際、2017年、中国企業「北京天驕航空産業投資有限公司」(スカイリゾン)が、世界的軍用機エンジンメーカーであるウクライナの航空宇宙企業「モトール・シーチ」を買収しようとした。
だが、結局、ウクライナは、安全保障を理由に、それを阻止している(ちなみに、米国はこの取引を止めるのに“貢献”したという)。現在、ウクライナにとって、NATOや同盟国との関係は重要である。そこで、キエフは高度な技術に関して、中国へ譲渡しない方針だという。
一方、ウクライナが西方を向いている間に、ロシアと中国は緊密な関係を築いた。このパートナーシップの結果、近年、モスクワは、より高度な軍備の北京への売却に積極的になっているという。そして、今年2月4日には両国関係に「限界はない」という共同宣言を行った。
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