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ロシアのウクライナへの軍事行動即時停止要求:国際司法裁判所の仮保全措置の持つ意味

Japan In-depth / 2022年3月19日 10時25分

 ロシアもウクライナも、ジェノサイド条約には加盟しており、条約の第1条で、「締約国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを、防止し処罰することを約束する」と、締約国の責務が明示されている。また、ジェノサイド条約第9条では、条約の解釈や運用についての係争については、締約国が国際司法裁判所に判断を求めることができることになっている。


 


写真) ロシアの軍事行動に関する国際司法裁判所での公聴会(2022年3月7日 ハーグ)
出典) Photo by Frank van Beek/ICJ via Getty Images


 ウクライナの訴えに対しては、先ず、国際司法裁判所がジェノサイド条約下で審議する法的管轄権があるかどうかが注目されたが、裁判所の判断は、ロシアやウクライナの公的発言の中でジェノサイドへの言及があり、二国間にジェノサイドに関する係争があることが認められるため、条約の解釈や運用に関する係争を審理する管轄権が国際司法裁判所にあるとの判断だった。


 この判断の下に、ウクライナで起きている深刻な人道状況に懸念を表明し、ロシアによる武力行使はウクライナの権利を取り返しのつかない状況にする可能性があり、また、原子力発電施設のダメージがウクライナ以外の国々にも影響を与え得ることから、ロシアに対して、軍事行動の即時停止を求める仮保全措置を命令を下した。


 この命令では、15人の裁判官のうち13人が賛成票を投じ、ロシアと中国の裁判官2人が反対した。他方、状況を悪化させる行動を取らないようにとの要請については、全員が支持した。


 仮保全措置は法的拘束力があるとの判断だが、本格的な審理はこれからとなる。ロシアは、国際司法裁判所の管轄権はないと主張していることから、審理に参加することは考えにくく、最終的な判決がウクライナに有利に出た場合、それを受け入れることはしないと思われる。


 国際司法裁判所に判決の強制的権限はないため、その執行については、最終的には国連の安全保障理事会の判断と決定による。安全保障理事会では常任理事国のロシアが拒否権を持っているため、実際には行動が取れないことになる。そのため、今回の仮保全措置はシンポリックな法的判断と見られている。


 ただ、国際司法裁判所の判断は、国際社会の司法判断となり、さらに、国際刑事裁判所がロシアの戦争犯罪など一連の犯罪を訴追する時の法的判断の基礎ともなりうるので、無視は出来ないであろう。


トップ写真) ロシアの軍事行動に関する公聴会が行われる国際司法裁判所を見つめる、ウクライナ国旗に身を包む女性(2022年3月7日 ハーグ)
出典) Photo by Michel Porro/Getty Images


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