インドで原発増設本格始動
Japan In-depth / 2022年5月11日 11時0分
2008年8月、国際原子力機関(IAEA)は 核兵器不拡散条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)不加盟のインドの民生用原子力施設に対する保障措置協定案を承認。こうしたことを受け、74年のインドの核実験を契機に米国主導で創設された、原子力関連資機材・技術輸出国の守るべき指針で輸出管理をする原子力供給国グループ(日本を含む45か国)は、インドを「例外規定扱い」にすることを承認。インドへの同資機材・技術輸出を可能とした。
以降、インドは米国、英国、フランス、ロシア、カザフスタン、カナダ、アルゼンチン、韓国、豪州、スリランカ、ベトナム、バングラデシュなどと原子力協力協定を締結。日本とは2016年11月に同協定を締結した。
その後、米国、フランス、日本などからの同資機材・技術の導入案件でいくつかの合意はなされたとはいえ、今のところ具体化していない。
インドの現在運転中の原発は22基。発電量は678万㎾だ。そのうち、2基=200万㎾分は2007年と2008年にタミルナド州クダンクラムで運開したロシアから技術導入の加圧水型軽水炉(VVER-1000)1-2号機によるもの。軽水炉が主流の世界の流れにのれず、国産の重水炉で原発開発を進めてきたというものの、発電量の30%近くはロシア技術の軽水炉に頼っている。総発電電力量に占める原子力発電の割合は2.8%と少ない。
インド原子力発電公社によると、グジャラート州カクラパール(Kakrapar)原発の3号機(22万㎾)が近く商用運転を始めるという(日本では同原発を「カクラパー」と称しているが、ヒンディー語表記では「カクラパール」)。
このほか、70万㎾のPHWR9基を建設中という。クダンクラム3-4号機(各100万㎾)は2023年3月、同10月に相次いで運開予定という。昨年6月にはクダンクラム5号機、同12月にはクダンクラム6号機を着工している。ここでもロシア技術は重きをなしている。
ロシアからは原子力潜水艦の国産化でも技術協力を受け、インドは世界で6番目の原子力潜水艦保有国になっている。武器調達でのロシア依存度も高い。
▲写真 インド海軍が保有するソビエト製原子力潜水艦チャクラ(1989年2月15日 ) 出典:Photo by Robert Nickelsberg/Getty Images
インドは、中国とラダク地方で国境紛争を抱え、また中国がミャンマー、スリランカ、パキスタンの港を軍艦の寄港地としていることに危機感を強めている。インドは、ロシアのウクライナ侵攻に関し、国連総会の緊急特別会合でのロシアに即時撤退を求める決議採択時に棄権したが、「おいそれとロシアとの縁は切れない」という事情がうかがえる。
シン原子力相は2031年までに原子力発電能力を現在の3倍以上の2,248万㎾にする体制は出来上がっているとしている。しかし、さらにその先を目指すには欧米などとの原子力での協力進展の具体化が不可欠だ。そのためには、資金面など解決すべき課題は多い。
トップ写真:ニューデリーから約150キロのガンジス川ほとりにあるナローラ原子力発電所(2015年5月) 出典:Photo by Pallava Bagla/Corbis via Getty Images
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