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プーチン大統領演説の欺瞞

Japan In-depth / 2022年5月18日 11時0分

「欧米はNATO(北大西洋条約機構)を主体にロシアへの攻勢を準備している」


いずれも事実や国際規則に反する勝手な主張だった。欺瞞だった。プーチン大統領がそんな無法な主張を口にする、その瞬間にもロシア軍はウクライナの国民を殺傷し、社会を破壊しているのだ。


私がモンゴルの日本人墓地の光景を思い出したのは、プーチン大統領のあまりに独善、あまりに自己中心の言葉に怒りを覚え、ロシアの前身のソビエト連邦がわが日本をどのように傷つけたかを想起させられたからだった。その日本への残虐な行為の結果の一つがその日本人墓地だったのだ。


その墓地をみたとき、私は胸がつまった。ああ、なんとも多数の日本人がここで亡くなり、遠い異国の地の果てに長年、放置されてきたのだなあ、という実感だった。


その悲劇を日本人に与えたのはロシアだったのだ。正確にはいまのロシアの母体のソビエト連邦、プーチン大統領がまさにいまも「祖国」と呼ぶ存在である。


私がその墓地を訪れたのは2000年7月だった。当時、産経新聞の中国総局長という立場にあった私は隣国のモンゴル国の大統領選挙の取材でウランバートルに短期、滞在した。選挙も終わった時点で郊外のダンバダルジャー墓地という日本人捕虜埋葬の地に足を運び、弔意を表したのだった。


墓地といっても放置されたままの状態なので、無惨な光景だった。無人の斜面の草地に低い柵で仕切られた100メートル四方の地面に600ほどの金属板の墓標が乱雑に並んでいた。墓標にはそれぞれに物故者の名前と出身地が日本語で記されていた。


だが墓標は多くが倒れて散乱したままだった。記された名前も汚れ、傷つきという状態だった。同じ日本人として胸を重くする情景だった。


この地に埋葬された日本人はみなソ連軍に不当に抑留され、強制労働を科された犠牲者だった。ソ連はシベリアに収容した多数の日本人の旧軍人や民間人の多くを当時、支配下にあったモンゴル人民共和国内にも送り、その地で強制労働をさせたのだった。私がみた墓地に埋葬されたのはそのソ連の暴虐な行為の犠牲になって、倒れた日本の同胞だったのである。


いまのプーチン大統領が「大愛国戦争」と呼ぶ第二次大戦ではソ連は1945年8月9日、日本との相互不可侵条約を破って、日本への攻撃に出た。当時の満州国から朝鮮半島にソ連の大部隊がなだれこんだ。日本はすでにポツダム宣言を受諾し、戦闘を停止したのにソ連軍は侵略と暴行を重ねた。


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