中国「宮廷クーデター」の傍証
Japan In-depth / 2022年5月24日 11時7分
次に、『万維読報』の「珍しい!李克強の演説、最近、壁のスローガンになる」(2022年5月18日付)という記事(d)を紹介しよう。
5月17日、ネットユーザー「斉天大勝」は、「貴州省遵義市のメッセージは明らかだ。(李克強首相の)言葉が付け加えられた」と伝えている。
李首相が過去に行った言辞とは「人民の願いに沿った方向で改革を行う」、「行革をさらに推進し、ビジネス環境の最適化に力を入れる」の2つである。
最近、それが遵義市政府要覧に掲載され、大きな議論を呼んでいるという。確かに、李首相の言辞が掲載されるのは奇妙な現象ではないか。
更に、『中国瞭望』「次男は長男と戦い続ける 李克強と習近平が再び対立」(2022年5月18日付)という記事(e)も興味深い。
5月18日、李克強首相は、就職活動中の学生を激励するため雲南大学を訪れた。習主席が「ゼロコロナ」政策を強く主張する中、李首相は公然とマスクを着用せず、周囲にも着用させなかったという。
▲写真 全国人民代表大会の開会式で発言する李克強首相(2022年3月5日 中国・北京) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
李首相や現地指導を受けた地方官僚、及び住民たちがほとんどマスクを着用していないのを、メディアは確認している(今年4月、李首相が江西省南昌市を訪問した際、役人が周囲の人にマスクを外すよう求めたという)。
このように、李首相が習主席の「ゼロコロナ」政策(f)に対し、公然と反旗を翻している。いくら李首相が、今の中国経済に危機感を覚えているとはいえ、もし「宮廷クーデター」が起きていなかったら、首相が習主席に対し、これほどまで露骨に反発できただろうか。
ところで、話は変わるが、最近、中国共産党中央委員会弁公庁は「新時代における退職幹部の党建設工作強化に関する意見書」を発表(g)した。
その「意見書」では、中国共産党の元老達が「党中央の政治方針を妄議(でたらめな議論)してはならず、政治に否定的な発言を広めてはならず、不法社会組織活動に参加してはならない」と強調している。
党が退職幹部たちに「中央に対し妄議を行ってはならない」と要求したのは異例である。つまり、それが実際に行われているという事を示唆しているのではないか。いかに引退した元幹部が、習近平政権に“干渉”しているのかが窺えよう。
ひょっとして、元幹部が習政権を“がんじがらめ”にしている公算もあるだろう。
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